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2023.11.05 10:00

「方向感覚を失う」ほど深く大規模なガザのトンネル網、イスラエル軍の作戦は

だが、こうした作業は困難かつ犠牲をともなうもので、ハマスが現在地下に人質をとっていることから、一層複雑になると専門家は話す。「厄介な問題の上に厄介な問題が乗っかっている」と元米陸軍特殊部隊中佐で、都市での戦争遂行に関する諮問機関「ナショナル・センター・フォー・アーバン・オペレーション」のディレクターを務めるクリストファー・デ・ロイテルは指摘する。

砂の迷宮

ガザの砂質土は「トンネルを掘るのにぴったり」だとIDFで地形アナリストだったジョエル・ロスキンはいう。ロスキンはハマスのトンネル網を研究し、現在はイスラエルのバルイラン大学の地理学部教授だ。

イスラエルが2005年にガザ地区から撤退して以来、ハマスが構築した立体的な地下施設にある通路の長さは数百kmにもおよぶと考えられている。通路は地下の司令部や貯蔵庫、兵舎、出口を結んでいる。この出口を使ってハマスはイスラエルにロケット弾を撃ち込んだり、IDFの地上部隊を待ち伏せしたりするために不意に地上に現れ、その後地下に消えたりする。

ロスキンによると、トンネルは手作業で掘られ、労賃は1日10〜20ドル(約1500〜3000円)と比較的安い。チームは2、3人の作業員で構成され、チームが掘る間に別の数人が土を運び出す。1日に掘り進めるのは90cmほどだ。

一部の通路は湿ったむき出しの土のままだが、ハマスはこの10年間、鉄筋入りの半円型のコンクリートでトンネルを補強し、爆撃にも耐えられるようにしてきた。

あちこちに換気シャフトが設置され、照明などの電力は地上の送電網と地下の発電機からとっている。ハマスが備蓄している食料や水、燃料は3〜4カ月分だと、レバノンの当局者はこのほど米紙ニューヨーク・タイムズに語った。

IDFが押さえたトンネルを訪れたことのあるゴードンによると、通路が交差する部分や部屋への出入り口は、コンクリートにはめ込まれた厚さ2.5〜5cmの金属製のドアで塞がれていることが多く、これを破るには技術を要するという。

トンネルの中に部隊を送り込むのは最後の手段だと専門家らはいう。ハマスが爆弾や仕かけ爆弾をばら撒いていると考えられている。トンネルが小さいため、IDFは地上のように兵士の数と火力支援の優位性を生かせず、地下での交戦は一騎打ちとなる。ゴードンによると、IDFはイスラエルとの境界付近で、幅およそ120〜132cm、高さ152〜175cmの地下施設の一部を発見したという。
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翻訳=溝口慈子

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