PlayStationで続く判断・投資ミス 成功モデルからの脱却に苦戦中

ここまでの話は、ハードウエアに限ったものだ。PS事業を統括するソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は、ジム・ライアン社長兼最高経営責任者(CEO)退任発表前、ライブサービス型のマルチプレイタイトルに軸足を大きく転換し、投資比率を全体の60%に増やす計画を表明していた。これは、売り切り型のシングルプレイタイトルばかりを作る状態から解放され、その代わりに『フォートナイト』『エーペックスレジェンズ』『Call of Duty: Warzone』のように年間を通して持続的な収益が得られるゲームを増やすという試みだ。

そのために、ソニーはBungie(バンジー)を37億ドルで買収した。バンジーが10年前から運営している『Destiny』シリーズは、PvP(プレイヤー対プレイヤー)とPvE(プレイヤー対環境)両方の要素があるライブサービスゲームでは数少ない成功例の1つとなっている。ソニーは、シングルプレイタイトル中心の傘下スタジオに、バンジーからライブサービスゲームの作り方を学んでもらうつもりだった。

だが今のところ、その思惑は完全に外れている。ソニー傘下の大手スタジオの多くがマルチプレイゲーム開発を命じられたが、その中でも最も注目を集めていたノーティードッグの『The Last of Us Factions』は、バンジーによる精査の結果、十分なクオリティに達していないと判断された。同作の開発は凍結され、今は発売にこぎつけられるかどうかもわからない状態だ。

同様に、シングルプレイタイトル開発で実績のあるスタジオがライブサービスへの進出に失敗した例は、クリスタル・ダイナミクスの『Marvel’s Avengers』、ギアボックスの『バトルボーン』、バイオウェアの『Anthem』など、数知れない。ソニーはそうした前例をすべて無視し、自分たちならうまくやれると信じているようだが、今のところそうはなっていない。
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翻訳・編集=遠藤宗生

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