PlayStationで続く判断・投資ミス 成功モデルからの脱却に苦戦中

安井克至

Joeri Mostmans / Shutterstock.com

ソニーのPlayStationには、2つの大きな強みがある。1つは、人々がほしがるゲーム機を作ること。もう1つは、傘下の開発スタジオに、PS向けのすばらしいシングルプレイ用タイトルを作らせることだ。

ソニーは何世代にもわたりこれらの強みを発揮してきたが、今ではそれで十分だとは考えていない。ゲーム開発費は膨れ上がっており、自社製のタイトルは単なる良作ではなくメガヒットにならなければならない。そのため、ソニーは従来の枠を超え、さまざまな方法で事業を拡大しようとしている。

しかし残念ながら、そうした試みは、外ればかりの印象だ。製品の面でも、特定ジャンルへの投資の面でも、企業買収の面でも、時間とリソースの使い方の面でも、振るわない結果となっている。

誤解のないように言っておくと、ソニーは、傘下の開発スタジオにPSの看板タイトルとなる質の高い作品をつくらせることに関しては、今でも大成功を収めている。『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』『Marvel's Spider-Man 2』など、レガシーを活用したGOTY(ゲーム・オブ・ザ・イヤー=年間最優秀ゲーム)級のタイトルを次々と生み出している。サンタモニカスタジオ、インソムニアック、ゲリラ、サッカーパンチ、ノーティードッグといったソニー傘下の開発企業が今後も良作を出し続けることに、疑いの余地はほとんどない。一方、同じく企業買収を繰り返してきたマイクロソフトは、同じ成果を出せていない。

しかしそんなソニーも、他の分野での事業は混沌とした状況だ。仮想現実(VR)に力を入れており、これまでに2つのヘッドセットを発売したが、VRは成長と普及のペースが遅い。そうしたニッチ市場ではうまくやっているものの、10年近く経った今もVRが主流になる気配はなく、これほどの投資を行う対象としては奇妙な分野のように思える。

ソニーはPS5用のリモートプレイ専用機「PlayStation Portal リモートプレイヤー」も発売したが、できるのはWi-Fiを経由したリモートプレイのみで、単体でゲームをプレイすることはできない。Nintendo Switchの対抗馬としては中途半端なハードであり、PS VitaやPSPなどのソニー製携帯ゲーム機の完全復活というわけではない。

先日発表された新型PS5は、ディスクドライブがオプションとなったが、それでもなぜか価格は値上がりした。ソニーは「PS5 Pro」の開発も進めているもようだが、この世代にProモデルは必要ないように思える。
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翻訳・編集=遠藤宗生

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