中国の人口減少は、1970年代末、中国のリーダーだった鄧小平が、一組の夫婦がもうける子どもを1人に制限したことに端を発する。鄧がそうしたのは、対外開放を進めていくなかで、できるだけ多くの働き手を確保することなどが目的だった。
「一人っ子政策」はある程度うまくいった。中国の女性は1960年代には生涯に平均6人程度の子どもを産んでいたが、80年代には3人足らず、90年代には2人足らずへと減り、2000年代以降もそのままだ。一般に、この数が2人を下回ると人口は維持できなくなると考えられている。
子育ての負担が軽くなることで、家庭の外で働く人は増え、工場の労働力となって、経済余剰を生み出した。この余剰によって輸出は急増し、大規模なインフラ事業もどんどん進められた。こうして中国の実体経済は活況を呈し、年10%を超える成長率を記録した。
だが、ここへきて一人っ子政策のツケが回ってきている。低い出生率が数十年続いてきた結果、退職世代の労働者と入れ替わる若い労働者の流入が急激に鈍化している。利用可能な労働力が不足すると、経済全体の成長率は抑えられる。中国政府は、現在の中国には本来必要な数の半分の工場労働者しかいないと見積もっている。
経済的な見地からさらに大きな問題は、大量の退職後世代を、限られた数の現役世代で支えていかざるを得なくなることだ。経済協力開発機構(OECD)によれば、中国では2000年時点で、高齢者1人を生産年齢の人は6.5人が支えていた。しかし、その数は2010年に5.4人、2020年に3.6人とだんだん少なくなり、2040年には1.7人まで減る見通しとなっている。現役世代は自分と家族を養っていくのに加え、各退職者が必要とする金額のざっと半分を負担しなくてはならなくなる。