ヘルスケア

2023.11.04 16:00

携帯電話の使用で「精子の数が減少」の可能性、スイスの研究者が指摘

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携帯電話を頻繁に使う男性は、そうでない男性よりも精子の数が少ないという研究結果が10月31日、米国の学術誌Fertility and Sterilityに掲載された。


2005年から2018年にかけて、スイスのジュネーブ大学とスイス熱帯公衆衛生研究所の研究チームは、軍の徴兵センターから18歳から22歳の男性2886人を集め、携帯電話の使用状況を記録するよう求めたという。

その結果、1日に20回以上携帯電話を使用する男性は、週に1回しか携帯電話を使用しない男性に比べて、精子数と精子濃度が大幅に低く、それぞれの数値が約5分の1だったという。

研究チームは、1日に20回以上携帯電話を使用する男性の精子の数は、ほとんど使用しない男性に比べて、世界保健機関(WHO)が基準値を下回るリスクが21%高いと述べている。さらに、携帯電話を常に使用する男性の精子の濃度は、WHOの基準値を下回るリスクが30%高いとされている。

研究者チームは、この研究が本質的に観察的なものであり、携帯電話の使用が精子数減少の原因であると断定することはできないと強調した。電磁波の影響や通話、インターネット閲覧、メッセージの送信など、さまざまな種類の携帯電話の使用を測定するために、研究者たちはスマートフォンのアプリを使って、より正確にデータを記録する新たな実験を開始している。

一方、携帯電話の使用と精子数との関連は、時間の経過とともに顕著ではなくなったと研究チームは述べている。電話信号の送受信に関わるエネルギーは、加熱を引き起こす可能性があり、精子の質に影響を与える可能性のある理由の1つと考えられているが、3Gや4Gへの移行は電話の送信電力の減少につながり、精子数の減少に影響する潜在的な要因の1つが減少した可能性があると、スイス熱帯公衆衛生研究所のマーティン・ルースリ准教授は述べている。

新たなネットワークが普及し、最新型の通信技術が登場する中で、研究チームは、これが生殖能力におよぼす影響をよりよく理解するために、さらなる研究が必要であるとしている。

精子の数は数十年間減少し続けているが、科学者たちはその原因を突き止められていない。ある研究では、妊娠の可能性に影響する精子の総数が、1973年から2018年の間に62%も減少したと推定されている。

精子の減少に関しては、環境汚染やアルコール、薬物の使用、地球温暖化による気温の上昇、ストレス、食生活の乱れ、座りっぱなしの生活などの現代人の暮らしのさまざまな側面が潜在的な原因として挙げられているが、その原因は1つではないのかもしれない。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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