AI

2023.11.03 12:00

バイデンの「AI大統領令」がスタートアップの壁となる可能性

「規制要件をクリア」する資金の問題

一方で、既存の大手企業はAI規制によって増加するコストを容易に負担できるため、今回の大統領令は彼らに有利に働くと指摘する声もある。「AIモデルのサイズの制限や厳格な報告要件といった過剰な規制は、大規模な独占企業だけが乗り越えられる障壁を作り出すだろう」とエンタープライズサーチのスタートアップであるHebbiaの創業者ジョージ・シヴルカ(George Sivulka)は話す。

サイバーセキュリティソフトウェアを提供するAbnormal Security(アブノーマル・セキュリティ)の共同創業者のエヴァン・ライザー(Evan Reiser)によると、新規参入したスタートアップの多くは、使用料が安く、カスタマイズがしやすいオープンソースモデルを基盤にAIのモデルやツールを構築しているという。

ライザーは、これらのスタートアップには、厳格なテスト基準や規制要件をクリアするための資金が不足していると考えている。

リーガルテック企業Robin AIの共同創業者であるリチャード・ロビンソン(Richard Robinson)は、メタのような大規模なオープンソースモデルを提供する企業に対する規制の影響は、他のスタートアップに波及する可能性があると指摘する。「個々の企業がファインチューニングしたモデルも安全性とセキュリティの規制対象になるとしたら、スタートアップが新しいモデルを迅速に構築して展開することが困難になるだろう」とロビンソンは話す。

一方、ホワイトハウスのAIアドバイザーであるベン・ブキャナンは、大統領令が大手テック企業の利益に沿ったものだという意見に異論を唱えている。「今回の大統領令にビッグテック企業がどれだけ影響を与えたかどうかはわからないが、市民社会や学界ほどではないだろう。AIのエコシステムは非常にダイナミックであり、我々はそのような状態を維持したいと考えている」と、ブキャナンは語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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