観測データは1996~2008年に、カリフォルニア州南部にあるパロマー山に設置されたパロマー試験干渉計(現在は廃止)を用いて得られたものだ。このデータと、欧州宇宙機関(ESA)の天文観測衛星のヒッパルコスとガイアによる観測データを組み合わせることで、巨星の距離や有効温度をより高い精度で算出した。これにより天文学者チームは、巨星の視直径(星の見かけの直径を天球上の角度で表した値)や温度、真の色を、過去の観測と比較して約2~4倍高い精度で求めることができた。
今回の研究をまとめた論文の主執筆者で、アリゾナ州フラッグスタッフにあるローウェル天文台の天文学者ジェラルド・バン・ベルは、筆者の取材に「今回の研究は、特定の巨星のサイズや温度について裏づけとなる情報が必要なあらゆる天文学者に、全面的に示唆を与えるものだ」と語った。「今回の観測は基本的に、他の恒星にも適用可能な、より優れた物差しを作り上げている」
2023年1月に米シアトルで開催された第241回米天文学会(AAS)で行った発表で、バン・ベルは、観測対象とした巨星の大半が、晩年の太陽に非常によく似ていると考えられると指摘した。
巨星はもはや中心核で水素の「燃焼」(核融合)を行っていない恒星だと、バン・ベルは筆者の取材に応じた電話と電子メールで説明した。
中心核の核燃料が枯渇し、殻状の領域での水素燃焼が始まっていると、バン・ベルは続ける。恒星の表面が縮小し「燃えかす」の周囲の殻状の領域が燃焼している。だが最終的に、中心核が十分高温になると、核融合の次の段階であるヘリウムの燃焼が始まる。
今回の調査対象の巨星はすべて、水素の殻燃焼か、ヘリウム中心核の燃焼のどちらかの段階にあるとバン・ベルは指摘する。