国家の安全保障にリスクをもたらす可能性のあるAIモデルを構築する企業は、それを政府に開示し、国立標準技術研究所(NIST)が定める基準に従って、データを共有することを求められる。この命令の適用対象には、GPT-4の後継モデルとして期待されているGPT-5が含まれる。
ホワイトハウスのAI特別顧問のベン・ブキャナンはフォーブスの取材に、GPT-4やグーグルのBardのような既存のAIモデルも「公平性条項や差別の禁止、消費者や労働者の保護」といった大統領令の他の要素が適用されると述べた。「しかし、これまでのところチャットGPT-4に起因する大惨事は起きていない」と彼は付け加えた。
この命令はまた、連邦政府が「数十から数百人」のAIに特化した人材の雇用を開始することを目的としており、AI分野で働く外国人が米国に移民する際の障壁を低くしようとしている。ブキャナンによると、この命令にH-1Bビザを増やすことは含まれていないが「重要な新興テクノロジー」に携わる人々のために、ビザの取得プロセスをよりスムーズにすることに重点が置かれるという。
同命令はまた、政府によるAI利用のためのガイドラインの策定を定めている。AIが市民を差別したり、重要なインフラを標的にしたり、戦争に利用されたりするのではないかという懸念に対処するため、大規模なAIモデルやプログラムを導入する前に連邦政府機関による評価を受けることも義務づける。
国防総省から司法省に至る連邦政府機関もまた、AIをどのようにその機能に組み込む予定であるかを開示する報告書の作成を求められる。セキュリティ問題に関するいくつかの条項は、今後90日以内に施行予定という。
「高スキルの移民労働者の活用」を促進
この大統領令は、バイデン政権がAI分野のリーダーとして米国を確固たるものにすると同時に、AI開発のための基準を策定する、これまでで最も広範な試みだ。この命令は、AIが侵略的なデータ収集のインセンティブを高めていることを前提に、超党派のデータプライバシー法を可決するよう議会に求めている。昨年末から大ブームとなったChatGPTの登場は、AIの有望性と同時に潜在的な危険性を明確にし、政府はそれ以来ガードレールの導入に奔走している。
AI関連の企業のリーダーたちは、政府のアプローチを称賛している。「測定できないものを管理することはできないが、今回の命令で政府はサードパーティによるAIシステムの測定と監視を実現するための有意義な一歩を踏み出した」と、Anthropic(アンソロピック)の共同創業者でポリシー責任者のジャック・クラークはフォーブスの取材に語った。
「この大統領令の最良の部分は、AI分野の高スキル人材の移民の雇用を促進するための取り組みだ。AIはまだ黎明期であり、米国がイノベーションのペースを加速させるためには、優秀な頭脳が必要なのだ」と、AIスタートアップLabelbox(ラベルボックス)の共同創業者でCEOのマニュ・シャルマはEメールで述べている。