海外

2023.11.01

豪HRテック企業Employment Heroがユニコーンの仲間入り

ベン・トンプソン(C)employment hero

オーストラリア・シドニーに本社を置くHRテック企業Employment Hero(エンプロイメント・ヒーロー)の共同創業者で最高経営責任者(CEO)のベン・トンプソンは、給与計算などの人事管理業務がエキサイティングなものではないと認めている。

「従業員に力を与える」という目標を掲げる同社は、HRプロセスのデジタル化を図る過程で、SaaSの提供にとどまらない幅広い機会を得たという。トンプソンは、自社が提供する給与の前払いサービスInstaPayを例にとり、「当社には世界の金融システムを再構築する力がある」と述べている。このサービスは、従業員が3豪ドル(約285円)の手数料を支払うことで、給与日前に月給の最大半分を受け取ることができるものだ。

「人事業務がアナログだった頃は、給与の支払い手続きに数週間を要していた。しかし、今はデジタル化されているため、給与が後払いである必要はなくなった」とトンプソンは言う。

エアビーアンドビーやメタ、ネットフリックスへの出資で知られる米ベンチャーキャピタル(VC)のテクノロジー・クロスオーバー・ベンチャーズ(TCV)は、トンプソンのビジョンを高く評価し、シリーズFラウンドを主導。このラウンドで、エンプロイメント社は2億6300万豪ドル(約250億円)を調達した。

10月19日に発表されたこのラウンドには、同社の既存株主であるInsight PartnersやAirTree Ventures、Seek Investments、OneVenturesが参加。設立9年目のエンプロイメント社の評価額は約20億豪ドル(約13億6000万米ドル=約1900億円)とされ.、同社は評価額10億米ドル超のスタートアップを指す「ユニコーン」の仲間入りを果たした。

TCVのゼネラルパートナーであるMuz Ashrafは「われわれは、彼らが対象とする市場がまだまだ未開拓だと捉えており、追い風が今後しばらく続くはずだと考えている」と話す。

エンプロイメント社は、中小企業を対象に、給与管理や新入社員のオンボーディング、パフォーマンスのモニタリングなどのHR関連業務を支援するオンラインツールを提供している。まだ黒字化を達成していないが、導入実績は世界中で30万社以上。従業員は、同社が「HRのスーパーアプリ」と呼ぶ「Swag」をダウンロードすることで、給与を確認したり、社内の求人情報を検索したりできる。
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編集=上田裕資

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