大学ファンドの本格的運用は2022年3月から始まり、2022年度は、過半を債券で運用したため、おもに外国債券価格の下落と為替ヘッジによる損失で、運用益はマイナスとなった。しかし、これは初年度で過度に保守的に運用していたことが裏目に出たので、中期的にはより株式とオルタナティブ資産の比率を高めることで、中期的に3%の運用益は可能であると考えられる。
一方、卓越大学の選定も始まった。今年度は、10校が申請して、東北大学が唯一の候補になった。書類審査で、東京、京都、東北の3大学に絞り込まれ、現地視察を経て東北大が選ばれた。東北大は今後申請内容の磨き上げを行い、文部科学省が、国立大学が経営の合議体をつくることができるように国立大学法を改正したうえで、来年度中に正式に卓越大学として承認されることになる。実際の支援開始は2024年秋もしくは、25年4月からとなる。
9月末に発表されたTHE(Times Higher Education)「世界大学ランキング2024年版」によると、東京大学は29位、京都大学が55位、東北大学は130位である。アジア地域のなかでも、中国やシンガポールの大学の後塵を拝している。日本の国立大学の研究力・教育力の急低下は、04年の「国立大学法人化」、およびそれと同時に始まった「運営費交付金の一律削減」と考えられる。
法人化は、大学の自律的な運営を可能にする、という触れ込みだったが、実際には、予算策定の枠組みや大学のガバナンスに大きな変更はなく、ただ予算の総額が減っていった。2004年から10年間、毎年1%超の削減が続き、13年の運営費交付金総額は04年の約87%にまで削減された。各大学では、順番に、学部が削減対象となり、若手の新規採用が難しくなった学部間で削減率に差をつけなかったため、この時期に本来は拡張すべき分野(コンピュータ科学など)で後れをとった可能性が高い。AI分野での後れ、先進的バイオ研究の後れは、この時期の予算削減が響いていることは間違いない。