このような状況を大きく変える可能性を秘めているのが、大学ファンドからの巨額の支援である。ただし、懸念材料もある。第一に、最近20年間に急速に社会の需要が高くなったのは、コンピュータ科学、情報、生命科学など自然科学系分野と、統計手法を駆使する一部の社会科学分野である。需要のシフトに日本の大学は追いついていない。大胆に学部定員を変える発想が必要だ。
第二に、ここ数十年で世界的な競争分野で使われる言語は英語に統一された。自然科学はもちろん、経済学や公共政策の分野でも英語で教育、研究が行われるのが世界中で当たり前となった。卓越大学では教育研究をすべて英語で行う覚悟が必要だ。
伊藤隆敏◎コロンビア大学教授・政策研究大学院大学客員教授。一橋大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学博士(Ph.D 取得)。1991年一橋大学教授、2002〜14年東京大学教授。近著に『Managing Currency Risk』(共著、2019年度・第62回日経・経済図書文化賞受賞)、『The Japanese Economy』(2nd Edition、共著)。