経済

2023.10.30 15:00

中国アリババ会長と台湾TSMC創業者が「アジアの成長力」を熱弁

アリババ会長のジョセフ・ツァイ(Getty Images)

アリババ会長のジョセフ・ツァイ(Getty Images)

アリババ会長のジョセフ・ツァイ(蔡崇信)は10月26日、ニューヨークで開催されたアジア・ソサエティ主催のディスカッションで、中国の経済成長の鈍化と米中の対立への懸念の高まりを理由に、投資家が「アジア地域のポテンシャルを見過ごしてはならない」と語った。

「アジアはとても大きな場所ですが、そこで暮らす人々の多くは勤勉で、非常に高いレベルの教育を受けている点で共通しています。私が投資家に尋ねたいのは、あなた方はアジアが衰退していくことに賭けたいのですかということです」と、ツァイは述べた。

「中国では経済の減速が見られますが、勤勉な人々や新たなテクノロジーに取り組む人々が数多くいます。アジアはまだ非常にダイナミックな場所なのです」

現在59歳のツァイは、台湾の半導体大手TSMC創業者の92歳のモリス・チャン(張忠謀)とともに「断片化する世界におけるリーダーシップ」について講演した。2人は世界で最も成功したビジネスマンに数えられ、台湾出身でカナダ国籍のツァイの保有資産を、フォーブスは76億ドル(約1兆1400億円)と試算している。一方、中国本土出身で米国籍のチャンの保有資産は、推定22億ドルとされる。

チャンは、米国の高等教育のすばらしさを称賛する一方で、台頭する中国との競争激化に米国がどう対処していくかを懸念した。半導体分野では現在、米中のデカップリングが進行中だが「私の唯一の望みは、これがさらに深刻な事態を招かないことです」とチャンは語った。

 「デカップリングは結局、すべての国の成長ペースを落とします。最終的に誰にとっても有害になります」と彼は指摘した。アリババ会長のツァイも「現在の世界のサプライチェーンは切り離されつつあり、デジタルの世界では多くの分断が見られます」と語った。

ツァイは、米中のビジネスパーソン間のコミュニケーションが、このような状況下で特に重要だと述べた。「世界は非常に危険で、予測不可能です。私は世界最大の2つの経済大国が偶然に、あるいは意図的に、さらなる対立に陥ることを懸念しています」と彼は述べた。

「私たちは、以前より複雑な地政学的世界に生きており、コミュニケーションが絶対に重要なのです」とツァイは続けた。

2人はこの日、自らの成功のターニングポイントについても語った。チャンは米国のテキサス・インスツルメンツに25年間勤務した後、台湾の工業技術研究所(ITRI)のトップに就任し、1987年にTSMCを創業した。

一方、法律の学位を持つツァイは、プライベートエクイティや法律分野からEコマース分野に転向し、アリババの共同創業者となった。「私は幸運でした。1999年に友人の紹介でジャック・マーと出会い、杭州のアパートで彼の弟子である熱意あふれる若者たちと出会ったのです」と彼は述べた。

ツァイはNBAのブルックリン・ネッツのオーナーでもある。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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