「インターネット・アーティファクツ」と題されたこのウェブ博物館は、プログラマーのニール・アガーワルの手による素晴らしい作品だ。インターネットの歴史を時系列にざっくりと見ていく形式で、紹介されている展示物の数々は、一目見て想像する以上の体験を提供してくれる。
たとえば1999年のページを見てみると、レコード会社の重役たちが頭を抱えた悪名高きMP3ファイル共有サービス「Napster(ナップスター)」の登場を記念する展示がある。展示物は、Napsterがサービスを開始した当時に人々が共有していたであろう1990年代後半の楽曲リストで、曲名を選んでダウンロードボタンをクリックすれば、実際にその楽曲をダウンロードできる。ただし、パソコンで曲を再生しようとすると、ちょっぴり愉快なサプライズが待っているかもしれない。
最初のウェブカメラ
インターネット史上で重要な出来事の一つに、1993年の世界初のウェブカメラ登場がある。英ケンブリッジ大学のコンピューター研究室に設置されたこのカメラには、非常に具体的かつ重要な用途があった。研究室内にあるコーヒーポットの残量を監視し、研究者が席を立たなくても、お代わりの1杯に十分なコーヒーが残っているかを確認できるようにするというものだ。常時監視下にあるコーヒーポットは、やがてインターネット上でセンセーションを巻き起こし、1秒間に3フレームという画質の粗い映像にもかかわらず、数百万人がウェブカメラの配信を見守った。
最初のMP3
もう一つ注目すべき展示物は、1987年に作られた史上初のMP3ファイルとされる音源である。それは、米シンガーソングライターのスザンヌ・ヴェガが歌う「トムズ・ダイナー」のアカペラ版だ。展示ページでは実際に音源を聴くことができる。このファイルは、今や普遍的な音楽フォーマットとなったMP3の開発に際し、データ圧縮によってボーカルの歌声に歪みが生じていないかを確認するためのテスト音源として使用されたものである。
ゲームの思い出をたどってみるのも面白い。インターネット・アーティファクツには、私の元同僚でITジャーナリストのデビッド・マキャンドレスが制作したFlash(フラッシュ)ゲームの初期の例が展示されている。2002年に公開された「ヘリコプターゲーム」は、後の「フラッピーバード」に似た、恐ろしく中毒性の高い横スクロールゲームだ。マウスボタンを押したり離したりしてヘリコプターの飛ぶ軌道を上下に動かし、障害物をかわす。
このゲームも展示ページで実際にプレイできるが、ありがたいことに、今は無きFlashプラグインをダウンロード・インストールする必要はない。
「インターネットの歴史」はここまで
この博物館の展示内容の範囲は2007年までだが、ソーシャルメディアの出現はしっかりカバーされており、世界初のツイートや、フェイスブックの前身でマーク・ザッカーバーグが最初に手がけたサービス「Thefacebook」の初期ホームページなどが展示されている。インターネットの進化を目の当たりにしてきた人にとっても、その当時を知らない人にとっても、インターネット・アーティファクツは30分を無駄にできる楽しい博物館である。
(forbes.com 原文)