物流の2024年問題 企業からドライバーへの説明はわずか2割

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日本における若者の人口が年々減少し、企業としては人材確保がますます厳しくなっている。さまざまな業界で働き方改革やDXを進め、少ない人材でも企業を維持できるよう努力しているが、物流業界は来年危機を迎えていると言われている。

「物流2024年問題」と称されるこの問題は、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働(残業)の上限が年間960時間に規制されることに発する。これまで残業によって支えられてきたこの業界が、人材確保できないとこれまでと同等の運行は難しくなるわけだ。また、トラックドライバーの立場からすると、残業が減るためその分収入が減ることになる。

そうした中で、企業側はどのように対応してきているのか、社内規定管理や社労士向けサービスを手掛けるKiteRaが「物流の2024年問題に関する実態調査」を行っている。

それによると、勤務先で物流2024年問題に関して何らかの研修や説明があるかとの問いに対し、77.0%の人が「何も行われていない」と回答。説明があるとしても「朝礼や終礼などの場で説明があった」が12.2%となっており、しっかりした説明や研修はあまりなされていないことが伺える。

では、上限規制によって発生する2024年問題を知っているかの問には、「知っている」が66.0%を占め、多くの人は認識しているようだ。ただ、「よくわからない」「知らない」という人が、あと半年に迫っているにも関わらず、まだ34.0%もいるとも言える。

実際にいま、1ヶ月間で平均どのくらい残業をしているかの問には、意外と40時間未満の人が多く、残業をしていない人も26.0%と4人に1人いた。逆に規制の対象となる80時間以上は6.3%で、こうした企業は今後改善する必要があることを意味する。

残業が発生する原因としては、「人員が足りないため」が57.8%でトップ。次いで「仕事量が多いため」が55.3%、「残業することが当たり前の環境のため」が34.2%となっている。また、「収入を増やすため自ら望んで残業している」と回答した人も21.2%と少なくなく、人手不足から一人あたりの仕事量が増え残業が発生し、それが慢性化して収入を得ており、その収入を維持したいと悪循環になっているようだ。

上限規制によって心配することに対しても「収入の減少」が67.3%と圧倒的で、「無理な運行・走行計画が立てられる」(27.7%)、「労働時間帯のシフトの変更」(27.3%)と続いている。

このように、物流の2024年問題は、現状1割弱の人が影響出るものの、今後人材不足・物流の増加によって状況が悪化し、より影響が大きくなるかもしれない。

出典:KiteRa「トラックドライバーの働き方に関する実態調査」より

文=飯島範久

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