欧州

2023.10.29 09:30

積み重なるロシア兵の屍、「孤塁」アウジーイウカを守る第110旅団の死闘

ダナ自走榴弾砲。2022年9月、チェコ・オストラバで(Karolis Kavolelis / Shutterstock.com)

しかも、第110旅団はそれほど新しい装備が配備されているわけでもない。この旅団が主に使っている車両は旧ソ連やチェコ、オランダ製のもので、むしろかなり老朽化している。具体的に言えば、オランダから供与された防護の薄いYPR-765装甲兵員輸送車、旧ソ連軍から引き継いだやはり軽装のBMP-1歩兵戦闘車、チェコから剰余分を譲渡されたダナ自走榴弾砲やRM-70自走多連装ロケット砲などだ。
advertisement

こうした可もなく不可もなくといった程度の車両を、第110旅団は独創的に用いてきた。3月に撮影された動画には、泥だらけの場所を第110旅団のYPRが前進しては反転し、そしてまた前進するという一見奇妙な動きをしながら、近くのロシア軍陣地に向けて重機関砲で射撃している様子が映っていた。

YPRのダンスは、敵が照準を合わせるのを難しくし、装甲の薄いこの車両を守るのに役立ったかもしれない。

とはいえ、第110旅団が持ちこたえてきたことは装備や戦術だけでは説明できない。これほど激しい戦闘では、装備や戦術以上に士気が重要になる。
advertisement

「この旅団は1年半にわたって、まったく交代せずにアウジーイウカを防御してきた」とブトゥーソウは驚嘆している。「かなりの数の部隊が、あらゆる種類の兵器による攻撃にさらされているアウジーイウカから一歩も出ないで、ずっとそれぞれの陣地で生活している」

「想像するのですら難しい」とブトゥーソウは続ける。「これらの鋼鉄の男たちは、世界のほかのどんな軍隊も耐えられないであろう状況で戦っている。ロシア軍ならあっさり逃げ出しているだろう」

壕に潜み、ロシア軍が最も好みそうな攻撃ラインで待ち構える第110旅団はおそらく、ここを放棄しない限り敗北することはないだろう。「わたしたちの兵士たちは長い戦闘で疲弊している」ともブトゥーソウは伝えている。「ロシア兵たちも、ウクライナ側が自分たちを殺すのに飽きてくれることを望んでいる」

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事