カバンを振るだけで、ブザーと録音、SOS発信
石川が選んだのは、日本人にはお馴染みの「お守り」だった。omamolinkは高さ6cm、幅4cm、厚さ2cm、重さ36グラム。コンパクトな本体には、家族やペットの写真などを収納できるスペースが設けられている。いつもは大切なものを入れてお守りとして持ち歩き、いざという時にはブザー発報や自動録音、SOS発信ができる。しかし、防犯ブザーも録音もSOS発信も、それらの機能を持つ商品はすでに存在する。omamolinkの違いは何なのか。「他の防犯アイテムは、基本的にカバンに入れて持ち運びます。ですが、犯罪者に追われている最中にカバンの中を探したり、スマートフォンを取り出してアプリを立ち上げたりしている暇はありません。omamolinkはカバンを振ることで防犯ブザーが作動し、周囲に知らせることができるほか、GPSが起動し、緊急連絡先にSOSと位置情報を発信できます」
内閣府の調査によれば、日本で起きる性暴力の7割以上が顔見知りやパートナーによるもの(女性の場合)。密室で行われることが多く、被害の立証には高いハードルが存在する。石川はomamolinkでそれを少しでも下げたいと語る。
「振動を検知すると自動録音機能が立ち上がるため、行為に同意していない証拠を音声データとして残せます。それによって、泣き寝入りする被害者を減らすことができます」
しかしカバンは持ち歩くものであり、日常生活で多少の振動が加わることは十分に考えられる。そうした場合、omamolinkの防犯ブザーやSOS機能が作動してしまうことはないのだろうか。
「日常生活の振動とSOS時の振動を区別するプログラムが実装されているため、歩いたり、自転車に乗ったりという日常の振動は検知しない仕組みです。犯罪者から走って逃げる場合を想定し、唯一、激しく走る場合の振動は検知する設計にしていますが、専用のアプリで感度も調整可能です。ランニングなど、運動の際には『スポーツモード』に設定いただけます。ハンドバックやリュックなど、バックの大きさや形状によっても振動の伝わり方が変わるので、ユーザーの皆さんには、事前に自宅などでシミュレーションいただくようにお勧めしています」
自社開発した「振動検知機能」には、最先端のエンジン制御技術が応用されている。現在、同社では特許を出願中だ。さらに、一般的なGPS搭載の見守りアイテムとの違いについて、石川は次のように説明する。
「一般的なGPS搭載の見守りアイテムについては、親御さんにお子さんの居場所がつねに伝わるようになっているため、お子さんが成長すると持たなくなる傾向があります。omamolinkは振動を検知した時にだけGPSが作動するので、必要な時だけ親御さんに居場所を知らせて助けてほしいという、お子さんの気持ちに応えます」
他にも石川がこだわった点が、心理面だ。インタビューを通じ、人はスタンガンなどの護身アイテムを持っていると安心できる反面、緊張して身構えてしまうため、それがストレスの原因になることが判明した。
「omamolinkならそうした心配もなく、ポジティブな気持ちで持ち続けていただけます」