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2023.12.13 11:30

「ラーメン専用稲」で作った1杯に行列。秋田男鹿市の塩麺を一風堂が監修、なぜ

スープは男鹿の名水・滝の頭の湧水。 諸井醸造のしょっつると男鹿の塩。お麩が乗っているのは秋田のラーメンに多いスタイル(写真提供=稲とアガベ)

スープは男鹿の名水・滝の頭の湧水。 諸井醸造のしょっつると男鹿の塩。お麩が乗っているのは秋田のラーメンに多いスタイル(写真提供=稲とアガベ)

(本稿は「読むふるさとチョイス」からの転載である。)


秋田駅から男鹿線で約1時間、終点の男鹿駅の駅前船川地区はいわゆる「シャッター街」だった。2年前の2021年、旧駅舎の建築を使ったクラフトサケ『稲とアガベ』醸造所と併設するレストラン『土と風』の“点”がまずできた。今年2023年4月、酒粕の発酵マヨネーズを作り販売する 『SANABURI FACTORY』開店で“線”ができた。そして8月に男鹿の食材を使ったラーメン店が開店、さらに、レストランで使う野菜や酒の原料になる自然栽培の酒米を作る農業と農地の拡大、そして……。

いくつもの線が面になり、男鹿の街が立体的に立ち上がっていく予感の風が吹く。その発信地である稲とアガベ代表の岡住修兵さんのまわりには、少しずつ人が集まってきていた。その中の一人であるレストラン『土と風』のホールと農業担当を兼任する保坂君夏さん、そして岡住さん、それぞれに抱く男鹿の未来への思いを聞いた。

男鹿の農地を耕し、『土と風』で男鹿の恵みをサーブする


稲とアガベ醸造所に併設する形のレストラン『土と風』。昼は酒の有料試飲と軽食、夜は8名限定の完全予約制レストランとして稲とアガベの酒をペアリングしたメニューを供し、全国からここでの食事を目指してお客がくる。そのレストランでのサービスと、稲とアガベの農業担当を兼任する保坂君夏(ほさかきみか)さん。レストランで使う野菜のほか、稲とアガベの酒米も作っている。

「稲とアガベ」代表岡住修兵さん(写真左)、『土と風』のサービスと農業担当の保坂君夏さん

「稲とアガベ」代表岡住修兵さん(写真左)、『土と風』のサービスと農業担当の保坂君夏さん


「大学3年の時に農業の現場を知るために休学し、農業を始めました。当時は片道1時間かけての通いでしたが、そのころから男鹿で農業の現場をよく見てきました。耕作放棄地で農業を始めたんですが、今は引退する高齢の農家さんから田んぼを引き継ぐ形で広げて、うちの酒米も作っていける広さになってきました」
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文=畠山美咲

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