京野菜が当たり前に残っている
農作物の一元化といった社会の変遷とともに、在来種が各地で姿を消すなか、京都では、京野菜と呼ばれる固有の野菜が今も多く残っている。聖護院かぶや賀茂なす、万願寺とうがらしなどが有名だが、これらの京野菜はGg’sでも人気が高い。ただ、角谷さんがおもしろみを感じているのは、こうした京野菜が“当たり前に残ってきた”ことだと言う。
「京野菜は現在ではいくつかの認証やブランディングがされていますが、京都では、特別な高級品としてではなく、おばんざいを作るための日常的な野菜として、他の野菜と同等に扱われてきました。今もそれは変わりません」
在来種が他の野菜と同様に扱われ、金額的にも手に入りやすい、という状態がどのようにでき上がっていったのか。その背景には振り売りの存在があったのでは、というのが角谷さんの考えだ。
「振り売りをしていると『去年のトマトの方が美味しかったわあ』などと言われることもありますし、『なすがちょっと皮が固くなってきたけど、その分実は味がのってきて、揚げたりするとすごく美味しいですよ!』などとお客さんに提案して買っていただくこともあります。社会のニーズを知ることで、農家さんは腕を磨いていく。畑の状況を知ることで、町の人の理解が深まる。振り売りは、そうした信頼関係のなかで持ちつ持たれつで育ってきた部分があると思っていて。そのなかで在来種も、他の野菜同様に品質を向上させていき、当たり前のように残ってきたのだと思います」
野菜は人そのもの
現在、直接取引をしている農家は30軒ほど。これまで様々な野菜を扱ってきた角谷さんだが、Gg’sで販売する野菜の基準はどこにあるのか?
「うちでは野菜の細かい農法よりも、農家さんの人となりがその基準になっています。野菜や土地にきちんと向き合っていたり、私たちと肌感覚が合うことを大事にしています。というのも、結果的には、その人となりがそのまま野菜に表れるんです」
同じ赤大根でも、農家によって味は全く違うものになると言う。例えば、ストイックな農家の大根はサイズ感小さめで味もキュッと締まっている。対して、朗らかな農家のものは大きく柔らかく、良い意味で水の力を感じるものになる。販売前に配達顧客に送っている日々の入荷リストに作り手の名前を必ず記しているのも、そんな理由から。
野菜を通じて、農家と町の人を丁寧につないでいくGg’sの振り売り。食や人への信頼という基盤の上に醸成されていくのは、かけがえのない地域の絆だ。生産者と消費者が離れてしまった今。コミュニティを醸成し地域を豊かにする装置として、こうした“次世代型”の八百屋は大きな可能性を秘めている。
Photo:成田舞
Gg’s
(本記事は「読むふるさとチョイス」からの転載記事です。)