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2023.11.30 12:45

野菜を天秤棒で売り歩く、京都の八百屋「お野菜どうどす?」の訴求力

きっかけは福島の農家


角谷さんが野菜に関わるようになったのは、大学時代に手伝った福島県で開催された東日本大震災のチャリティーライブがきっかけ。イベントの一環で、会場内で県内の農家による野菜を販売した。

「福島の野菜に対する世間の不安も強い時期でした。それでも明るく自分たちのできることを、言い訳もせずに楽しそうにやっておられる姿を見て、なんて強いんだろうと思いました」

その後、角谷さんは当時決まっていた内定先を辞退し、より積極的に福島の農家とも関わるように。次第に出身地である京都の野菜にも目が向くようになり、畑の手伝いをさせてもらうことになったのが、上賀茂にある八隅農園だった。

「昔、祖母が“賀茂のおばちゃん”と呼んでいた振り売りのおばちゃんから野菜を買っていたので、振り売り自体は知っていましたが、私にとっては過去のものだったんです。だから、八隅農園の八隅真人さんが今も振り売りをされていることや、他にもされている農家さんがいるのを知って驚きました」

自らの仕入れや伝え方次第で野菜の価値を高められる、という振り売りは、当時野菜のP Rに携わっていた角谷さんにとって魅力的に映った。

「振り売りしてみれば? と八隅さんに言われ、面白そう!という勢いで始めました。振り売りをやっている農家さんにゼロから教えてもらいながら、今の形ができていきました」

小商いにこだわる理由

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現在Gg’sのメンバーは角谷さん含め3人。新規の配達依頼もあるが、現在は受け付けていないという。事業のサイズ感はいつも悩んでいる部分ではあるのですが……と前置きしてから角谷さんは言う。

「野菜は自然のものですし、様々な要因に左右されるデリケートさもあります。それゆえに、この仕事は本当に細かい調整の連続なんです。農家さんと電話で話して、そのニュアンスまで料理人さんに伝えてリクエストを聞いて、また農家さんに細かく伝える、というのを毎日行っています。経済合理性は低いと思うんです。けど、その細かな調整が私たちの要でもある。事業の規模を大きくしたら、そこが成り立たなくなる。小商いの規模感でしかできないことがあると思います」

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事業を大きくするよりも、農家と町の人との関係性を丁寧に紡いでいく。そうした角谷さんの原動力になっているのは何か。

「ストイックな料理人さん、農家さんへの憧れかもしれません。例えば、京都にある日本料理店『草喰なかひがし』の店主・中東久雄さんは、毎朝野山や畑へ入り、季節の移ろいやその土地の空気に触れ、感じたものをお客さんに伝えながら料理を提供されています。私も実際、大原の畑で何度もお会いしていて。本当にすごいなと。農家さんだって、毎日畑に出ているわけだし。積み重ねていくことでしか生まれない信頼がある。だから私も、もっと丁寧にやろう、の積み重ねです」
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文=池尾優

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