新規事業

2023.12.06 09:30

網走駅前のシャッター商店街に書店店主がふるった「愛のメス」

石井節子

街のファンを増やすために「ふるさと納税」を代行


空き店舗の活用のほかに始めたのは、ふるさと納税の促進だった。

「今も頑張っている店に、さらに元気になってもらうためには必要とされていることが大事だと考えました。あとは、網走に住んでいなくても応援してくれる人を増やすことも必要だな、と。それなら、ふるさと納税の返礼品として人気になったらいい。ただ、個人商店が多くて、それぞれ忙しくて手が回らないのが現状だったんです」

そこで田中さんが手がけたのは、ふるさと納税にまつわる代行業だ。事業者登録のための申請書類を作成したり、サイトに掲載するための写真を撮ってやり取りをしたり。

「みんなやりたいけど、やり方がわからないと諦めていたんですよね。パソコンも使えないし、メールアドレスも持ってないからって。それなら私が代わりにやると話すと、みんな喜んで参加してくれました」

読むふるさとチョイス

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魅力的な返礼品があれば、網走から遠く離れていても、応援してくれる人が現れるはず。田中さん曰く「関係人口を増やすことが大事」というわけだ。網走の良さを知り、足を運んでみようという人が多くなれば、街も活性化する。ファンを増やすことが、すでに住んでいる人、店を営んでいる人たちの支えになるのだ。

「私のおすすめは、まるゆうさんのジンギスカンと、千秋庵さんのお菓子と、あとはさかなの金川さんのもおいしいんですよ。他にも……」と、次々出てくる。「まちなか網走」のサイトでは、それらのおいしいものを紹介しつつ、この商店街にどんな人がいて、どんな魅力があるかも発信している。返礼品からこの街に興味を持った人が、足を運ぶきっかけ作りもしているのだ。

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そんな話をしながら、田中さんと一緒に商店街を回っていると、大きな工事をしている場所があった。冒頭で話していた大型スーパーの跡地だ。

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「市役所がここに移転してくることが決まったんです。この工事のためにたくさんの人が来てくれているし、市役所ができればまた人の流れも変わるはず。お店を出したいという人も増えてきているので、これからは、より若い世代が入ってきてくれたらいいなと思っています」

この街に住む人を大切にしながら田中さんがコツコツ取り組んできたことが、より広がりを見せていくのは想像に難くない。すでにシャッター商店街という印象はすでにないのだから、きっとここからの発展も着実に進んでいくだろう。

株式会社まちなか網走

Photo:相馬ミナ

(本記事は「読むふるさとチョイス」からの転載記事です。)

文=晴山香織

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