新規事業

2023.12.06 09:30

網走駅前のシャッター商店街に書店店主がふるった「愛のメス」

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空き店舗をなくすためには事業を一緒に考えることから


店をやりたい、イベントを開催したいという人もいて、空き店舗もある。当時は、そこがうまく結び付かずにそのままになっている状態だった。それならマッチングするように紹介すればいいかというと、そうでもない。
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「そもそも、事業を始めたい人が何から手をつけていいか分からないという状況が多かったんです。じつは、網走市や網走商工会議所、網走信用金庫などを調べると『創業者支援』としての補助金もある。だけど、どこにどう掛け合ったらいいのかわからないという人ばかりだった。それなら、一緒に考えていけばいいんじゃないか、と」

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やりたいことに合わせて、市役所や網走商工会議所、網走信用金庫などと繋がりを持たせ、事業計画書を一緒に練り上げて提案する。開店・運転資金の補助が受けられるようにサポートしながら、同時に空き店舗を紹介すれば、商店街で店を始めてもらえるというわけだ。

「たとえば、コーヒーショップを開きたいという人がいて、一日5万円の売り上げを考えていると言います。網走でコーヒーを売るなら1杯300円くらい。それを1日何倍売るつもりなのか。人口が3万人ちょっとで、どれくらいの人が来ると考えるのか……と考えていくと、そもそも5万円の根拠って?となってくるわけです。空き店舗という『ハード』だけでなく、そこでどういうビジネスを展開できるか『ソフト』も一緒に考えていけるように、私自身も勉強しながらやっています」
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さらに、会社としても空き店舗を活用して新たな事業を始めている。空きビルの2部屋を使ったゲストハウス「ワタラ」と、もと時計宝飾店を活用したコワーキングスペースの「ナシタ」だ。

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「ありがたいことに『ワタラ』は海外のお客様からも好評ですし、『ナシタ』も企業向けのスペースは埋まっています。道外から出張で来る方も多い土地なので、ゲストハウスやコワーキングスペースはニーズに合ったのかもしれません」

どちらも補助金をもとに、改装したり、ホームページを作ったりしているため、これから事業を始めたい人にとってのお手本にもなっているのだろう。これらの活動が功を奏し、それまであった空き店舗はほとんど埋まっているという。

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「シャッターが閉まっているというイメージはなくなりつつあると思います。ただ、難しい場所もあってね。競売物件や破産管財人の管理物件もあるので、そういうところはすんなり賃貸に出せるわけではない。みなさんいろいろな事情で閉店しているので、そこは仕方ないんです。好きでシャッター通りになったわけじゃないのでね、少しずつやっていこうと思っています」

ここで長く店を構え、変遷を見てきた田中さんだからこその優しい目線だ。これから来てくれる人のことばかりを考えてしまいがちになるが、田中さんはそうではない。店を閉め、それを貸したり売りに出す立場の人のことも考えながら、商店街のこれからを考えているのだろう。

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「人口が減ってくると、つい移住促進のためのあれこれを頑張ろうとします。それも大切なことですが、私が考えるのは今もここで生活している人のこと。4万人が3万人に減ったとしても、まずは、残っている3万人の幸せが大事だと思うんです」
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文=晴山香織

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