経営・戦略

2023.10.30 16:00

ここまで日本と差がついた「海外のすごいリスキリング」

Shutterstock.com

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日本のリスキリングが海外からどの程度遅れているか、ご存知だろうか。「少なくとも6〜7年」。そう答えるのは、日本におけるリスキリング普及の第一人者と言われる、ジャパン・リスキリング・イニシアチブの代表理事でリスキリングプラットフォーム、SkyHive Technologiesの日本代表も務める後藤宗明氏だ。
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アメリカでリスキリングが注目され、成功事例がメディアに掲載され始めたのが2015年から16年。シンガポールがリスキリング専門の政府機関、スキルズフューチャーを設置したのが2015年。それら先進国と、2022年、岸田首相がリスキリング支援に1兆円を投じると表明した日本の動きを比べると、後藤氏の主張には頷ける。

では、海外の先進国では現在、具体的にどのようなリスキリングが行われているのだろうか。そこには、日本企業がリスキリングを成功させるためのヒントが詰まっている。前回に続き、後藤氏に聞いた。

ジョブ型はもう古い。「スキルベース雇用」とは

日本企業では昨今、新卒一括採用を中心とする「メンバーシップ型雇用」から、職務内容に基づいて人材を採用する「ジョブ型雇用」への移行が進んでいる。しかし海外では「スキルベース雇用」という新しい手法が注目を集め、大企業を中心に導入が進んでいる。

「スキルベース雇用は、ジョブを役割(ロール)→ケイパビリティ(能力)→スキル(技術)まで細かく分解し、そのスキルに基づいて人材を雇う手法です。普及の背景には、デジタル人材の不足と、人材が持つスキルをAIで可視化する、私たちSkyHive Technologiesのようなスキル・テックの広がりがあります。
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例えば、企業がデジタル関連のプロジェクトを立ち上げる場合、スキル・テックを用いることで、具体的にどんなスキルを持つ人材が必要になるのかや、自組織における該当人材の有無が分かります。そして該当人材がいない場合には、自組織の人材に足りないスキル(スキルギャップ)とは何かが、可視化されます。すると、企業はリスキリングで社員に習得してもらうべきスキルやその候補者が誰なのかを、把握できるようになります」(後藤氏)

スキルベース雇用のメリットとしては、学歴や性別、人種などに関係なく、高いスキルを持つ人材が正当に評価・雇用されること。そして、企業にとってはタレントプールの増加や、採用の時間短縮が挙げられる。海外では、スキルを標準化する動きも見られる。しかし、スキルベース雇用が普及すると、日本企業にはある「不都合な真実」が生まれる。

「スキルベース雇用では、人材一人ひとりにどんなスキルがあるのかを、明らかにしなくてはなりません。長らくメンバーシップ型雇用を行ってきた日本の組織で、高い給与とポジションを与えられている方も例外ではありません。例えば、『部長には意外とデジタルスキルと語学力がない』などということが、明らかになります。そのため、リスキリングのニーズが顕在化し、企業として取り組む必要が出てくるのです」(後藤氏)

先進国では一般的な「CLO」が果たす役割

DXなどのリスキリングはチェンジマネジメントだと言われ、進める上で経営戦略と人事戦略が一致しないというのはよくある話だ。

「人事のトップであるCHROには、デジタルの知識や経験を持たない方が多く、デジタル化を推進するチーフデジタルオフィサー(CDO)には、HRに関する知識と経験が豊かでない方もいらっしゃいます。そのCHROとCDOを繋ぐ役割が、チーフラーニングオフィサー(CLO:最高人材・組織開発責任者)です」(後藤氏)
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文=大柏 真佑実

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