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2023.10.28 08:00

ジョブズが思い描いた「インタラクティブなテレビ」の始まり

安井克至
アップルがテレビ市場に再び参入し、2006年に最初のApple TVデバイスを発表するまで12年かかった。その頃にはジョブズと彼のチームは、アップルのテクノロジーを世界中のテレビに提供する新しい方法を模索していた。

だがアップルが第3世代のApple TVを発表したのは、ジョブズの死から1年後のことだ。これがジョブズの「考え出した」発言につながったビジョンに沿ったものであることは一層鮮明になった。

実際、Apple TVのUIとインターフェースは、伝記の中で紹介されたジョブズの「所有するすべてのデバイスやiCloudとシームレスに同期する」という考えを実現している。

アップルのCEOのティム・クックとサービス担当上級副社長エディー・キューは、iCloudと結びついたインタラクティブなテレビというジョブズのビジョンがその可能性を最大限に発揮できるよう尽力してきた。2人はApple TVのUIとクラウドサービスにビデオコンテンツを統合するというすばらしい仕事をし、Apple TV+向けのオリジナルコンテンツを制作することでジョブズのピクサーでの取り組みを引き継いだ。

しかしジョブズのピクサー買収のように制作スタジオを買収するのではなく、アップルは複数のスタジオを利用することでコンテンツ制作の網を広げ、ジョブズが愛したであろう高品質の映画やテレビドラマを視聴者に届けている。

アップルはすでに映画『コーダ あいのうた』でアカデミー賞の3部門で賞を獲得しており、他にも『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』や『ナポレオン』など、今年のアカデミー賞候補と目されている作品もある。

ジョブズのアイデアには当初「統合型テレビ」を生み出すことが含まれており、それは実現しなかったが、Apple TVデバイスはあらゆるテレビを「アップル一体型テレビ」にした。

ジョブズのピクサーにおける取り組みとテレビの未来に対する直感に加え、クックとキューがジョブズのスマートテレビのビジョンを守り続けていることで、アップルはジョブズが生前、心に描いていたもののずっと先を行っている。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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