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2023.10.28

ジョブズが思い描いた「インタラクティブなテレビ」の始まり

Ivan Marc / Shutterstock.com

ウォルター・アイザックソンが書いた伝記『スティーブ・ジョブズ』の中で紹介されているジョブズの興味深いコメントの1つに、テレビの未来についてどう考えているか語っているものがある。

アイザックソンは伝記でジョブズの言葉を引用して次のように書いている。

「『徹底的に使いやすい統合型のテレビを作りたい』と彼は私に語った。『所有するすべてのデバイスやiCloudとシームレスに同期するものだ』。ユーザーはDVDプレイヤーやケーブルテレビの複雑なリモコンをいじる必要はない。『想像を超えるほどシンプルなユーザーインターフェース(UI)になる。私はついにそれを考え出した』」

このジョブズの言葉が明らかになってから、私はジョブズがどのようにしてこのアイデアを思いつき、自信を持ってついに「考え出した」と言えるに至ったのかを想像しようとしてきた。

ジョブズの言葉の根拠を示す1つのヒントは、1984年に幕開けしたDTP時代から、マック上で行われるコンテンツの制作と操作に注力してきたことかもしれない。アップルを去った2年後の1986年にジョブズはルーカスフィルムのグラフィック部門をを買収してピクサー・アニメーション・スタジオを設立し、デジタル映画を中心に別のかたちのコンテンツを作り始めた。

1992年にソニーが映画会社のコロンビア・ピクチャーズを買収した直後に、私はソニーの創業者、盛田昭夫にインタビューする機会を得た。ソニーはハードウェアの会社なのに、なぜ映画会社を買ったのかと尋ねた。すると盛田は「ソニーの考えでは、映画はソフトウェアにすぎない」と答えた。

ジョブズも映画はソフトウェアだと考えていた。そして、これがアイデアの具体化に向けたジョブズの旅の始まりであり「考え出した」発言につながったのだと思う。

興味深いことに、アップルはホームエンターテインメント市場に参入しようと、1993年にMachintosh TVというPCとテレビを合体したようなものを作ろうと試みた。だが惨憺たる結果に終わり、翌年に製造が中止された。
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翻訳=溝口慈子

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