『メタルギア』最新ハード移植で問題続出 コナミの手抜きが露呈

『METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1』に含まれる『メタルギア ソリッド HD エディション』(ultrafx / Shutterstock.com)

『METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1』に含まれる『メタルギア ソリッド HD エディション』(ultrafx / Shutterstock.com)

『METAL GEAR SOLID』(メタルギアソリッド)はゲーム業界で最高水準の評価を得ているシリーズだが、現在はコナミの「人質」となっている。コナミはかつての栄光を失っており、シリーズ開発者である小島秀夫はとうの昔に退社し、別のプロジェクトに取り組んでいる。

コナミがこのたび発売した『METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1』は、シリーズ旧作を最新プラットフォームに移植した作品で、本来なら喜ばしいもののはずだった。だが会社の現状を考えると、コナミがこれにしくじるのではないかと憂慮していた人もいるかもしれない。残念なことに、その不安は多くの点で的中した。

コナミは今回の移植で、オリジナル作品に多くの改善を施す努力を怠った。少なくとも、これまでエミュレーターが同作に対して行ってきたことに比べれば、改善点は少ない。解像度はPC版でも720p止まりで、ファンたちが即座に4K解像度MODを作り公開する状況を生んだ。ユーザーインターフェース(UI)は時代遅れで、バグやグラフィックの問題も続出、動作はスムーズでなく、画面のアスペクト比も変えられない。中でもひどいのは、PC向け調整がほぼ行われていないため、マウスがまったく使えず、WASDキーで移動し、Uで撃たなければいけないことだ。

言ってしまえば、オリジナル版ゲームのCDを複製したISOファイルに、ほとんど手を加えずに発売したも同然だ。目的は楽な金稼ぎであり、今のコナミに期待できるのはその程度だろう。もちろん、次の『MASTER COLLECTION Vol.2』にはより新しいタイトルが含まれるので、プレイ感は少しはましになるはずだ。だが『Vol.1』の出来を見る限り、コナミには最低限以上の努力は期待できない。良い点があるとすれば、ベースのゲームがおもしろいことだ。Nintendo Switchなどで『メタルギア』が遊べるのは確かにうれしい。

『MASTER COLLECTION』がもたらすものがあるとすれば、エミュレーションの魅力が増すことだろう。『メタルギア』の権利を所有するコナミが、最低限の努力でつくった移植版でシリーズの熱烈なファン層から金を搾り取ろうとしているのであれば、世の中にはそれより優れた製品が無料で出回っていることを理解すべきだ。これは、任天堂が学べなかった教訓でもある。任天堂は古いタイトルを最新ハードに向けて十分に提供しなかったことで、無数の作品がエミュレーションで遊ばれる事態を引き起こしてしまった。

これまでに、名作シリーズが移植やリメイク、リマスターで大成功を収めた事例は数多くあった一方で、手抜きタイトルもたくさん登場してきた。『MASTER COLLECTION』がそのどちらであるかは一目瞭然であり、それを手がけた企業を考えれば驚くことではない。小島氏が不在かつ、コナミが自社の黄金時代の遺産から永遠に金を搾り取ろうとしているような状態で、『メタルギア』シリーズの未来に希望を抱くのは難しい。

forbes.com 原文

翻訳・編集=遠藤宗生

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