2023.10.26 13:30

火災被害のハワイ・マウイ島西部、11月1日に観光完全再開 住民から抗議も

大規模な森林火災で壊滅的な被害を受けたハワイ・マウイ島西部の町ラハイナで、焼失した建物の残骸のそばを通り過ぎる復旧車両。2023年10月09日撮影(Mario Tama/Getty Images)


州政府は観光業をハワイ経済の主軸と位置づけているが、ひっきりなしに押し寄せる観光客をめぐる論争と住民間の分断は火災以前から問題となっていた。道路やビーチ、店に観光客があふれ、地元住民の暮らしに支障が出るオーバーツーリズムはかねて議論の的となっており、あるホテル従業員はBBCの取材に、地元民は「観光客を嫌うよう仕向けられているようなものだ」と述べている。
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米プリンストン大学のチームが今年発表した研究では、観光客がハワイ諸島の自然環境の多くを破壊していることが指摘された。ABCニュースは、安全な飲料水の不足や住宅価格の高騰など、ハワイが直面する問題の多くを観光業と結びつけて考える住民もいると報じている。

8月8日にマウイ島で発生した火災は、米国内で起きた山火事としては1918年以来最多となる97人の死者を出し、歴史的なラハイナの町並みは大部分が灰燼に帰した。ハリケーンの強風により、干ばつの影響が残る地域に延焼が一気に拡大。炎はみるみるラハイナに到達し、地元消防局長は当局が避難指示を出す間もなかったと語っている。シルビア・ルーク副知事は、州政府ではハリケーンの豪雨には備えていたが、大規模な森林火災は「予想していなかった」と明かした。緊急事態の中、マウイ島全域に80カ所設けられた屋外警報装置はいずれも作動しなかった。

火災原因や死者を出した責任をめぐり、州と地元電力会社が訴えられている。火災で娘を亡くした男性は、警報が鳴っていれば娘は助かったはずだとして、州政府とマウイ郡当局を相手取り、警報機を作動させなかった責任を問う訴訟を起こした。当局は、住民が津波警報と勘違いして火の手が強い高台に逃げる恐れがあったため、警報を鳴らさなかったと釈明している。一方、マウイ郡は、強風と乾燥した状態の中で電力を遮断しなかった電力会社ハワイアン・エレクトリックの過失が火災を引き起こしたとして、同社を訴えた。
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太平洋災害センター(PDC)と米連邦緊急事態管理庁(FEMA)は、ラハイナと、やはり森林火災で大きな被害を受けた島中央部のクラの再建費用は合わせて約60億ドル(約9000億円)に上ると試算している

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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