そのうえで、片岡氏はターゲッティング能力などの構築でカギになる要素として、抗堪性の高い通信を提供するネットワークは当然必要としつつ、リアルタイムに得られた様々な大量のデータを迅速に分析し、その結果をユーザーに届けるために必要となるクラウド能力を挙げる。ここでも、ウクライナ軍が活用している「GIS Arta」や「Kropyva」、「eVorog」などのクラウド上のアプリケーションが参考になるという。衛星や無人機に加え、アプリを通じて市民から得た敵の位置情報などを地図上に落とし込み、ターゲッティングに活かしている。地上戦が主舞台のウクライナと、洋上や島嶼での戦闘が懸念される日本では実情が異なるが、幅広く、米国などの同盟・同志国や民間企業、市民などとの協力が必要になることは変わりない。
片岡氏は最近、自衛隊の後輩たちに「もっと情報戦やデータ戦にも目をむけるべきだ」と語ったところ、「もう取り組んでいますよ」と返されたという。国家安全保障戦略など安保3文書でも、領域横断作戦に資する情報共有機能の強化を図るため、共通基盤としてのクラウドを整備するとしているが、片尾氏が理想とする「バトル・マネージメント・システム(戦闘管理システム)」の構築には時間がかかるようだ。もちろん、米軍が進めている最先端の「ジョイント・オールドメイン・コマンド・コントロール・システム(JADC2)」や米空軍の「アドバンス・バトル・マネージメント・システム(ABMS)」などには及びもつかない状態だという。
日本人にとって、トマホークは、湾岸戦争やイラク戦争、米軍によるシリア攻撃などでたびたび話題になった、「おなじみの兵器」だ。それだけに、どうしてもミサイル本体やその数に目が向きがちになるが、目に見えないターゲッティングや攻撃結果の評価の問題についてもっと目を向ける必要があるだろう。片岡氏は「いきなり大規模で完璧なシステムを目指しても仕方がない。まずは南西諸島など一部の地域をカバーする小規模で限定的なシステム作りを急ぐべきだ」と語った。
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