ところが、その第3の道をひた走る人物がいる。『超ミニマル・ライフ』(ダイヤモンド社)の著者、四角大輔だ。彼は、会社員時代に15年かけて「お金」に縛られない働き方を追求し、30代でニュージーランドに移住して「組織・場所・時間」に縛られない生き方にシフト。そこから10年以上かけて「お金と労働」から自由になるミニマル・ライフを完成させた。
「出世して、今より収入を上げたい」。これが一般的な会社員の命題である。ところが四角は逆を提唱する。物質的な豊かさの極みにある日本では、むやみな昇進や所得増といった「苦しい拡大成長」よりも、彼が過去に何度も実践してきた「パフォーマンス向上のためのダウンシフト」や「効率化のためのスケールダウン」、つまり「脱成長」こそが合理的な人生戦略だという。
「昔から、物欲やブランド志向がなく、古着を愛用し、家具と家電は中古のみ。ぼくがいたエンタメ業界の人たちは、所得が増えると服や持ち物が派手になり、外車に買い替え、高級マンションに引っ越すのが当たり前。その結果、お金と労働の奴隷になっていく『拡大成長病』でした。ある経営コンサルタントは『右肩上がりの呪い』と呼んでます。
そんな中ぼくは、ヒットメーカーと呼ばれるようになって年収が上がっても、キャンピング仕様にDIYした国産の中古バンを乗り継ぎ、いわく付きの格安の部屋に10年以上住み続けた。周りからは変人扱いされましたが、結局15年間の会社員生活で一度もボーナスに手をつけることなく、『サイドFIRE』が可能な投資金と、ニュージーランドの辺境の一軒家を買える貯蓄ができたんです」
昨今、インフレや円安でライフコストを意識する人が急増しているが、四角は以前から、お金の使い道を「投資・消費・浪費」に分けて考え、「消費」は極限まで減らして「浪費」はゼロを目指してきた。こう聞くと禁欲的な節約生活のようにも感じられるが、ミニマル・ライフで重要なのはメリハリで、夢には大胆に「投資」してきたという。