学術誌『Geochemical Perspectives Letters』に23日付で掲載された論文の執筆者らによると、44億6000万年以上前のものと考えられるこの結晶は、月で最古の固体物質だという。
これは、月自体が誕生した時に結晶が形成されたことを意味する。月の誕生の正確な時期は、これまで未解明だった。だが、月がどのようにして形成されたかについては、地球と原始惑星との「巨大衝突」の結果だとする説が広く受け入れられている。
どのように月は形成されたのか
巨大衝突説によれば、現在は「テイア(Theia)」と呼ばれている火星サイズの惑星が地球に衝突し、その結果として生じた残骸が地球周回軌道に集積して、月を形成したという。NASAの科学者らが2022年に開発したスーパーコンピュータのシミュレーションによると、驚くべきことに、月は惑星の衝突からわずか数時間以内に形成された可能性がある。
まぎれもない証拠
1972年に実施された最後の有人月面着陸ミッションのアポロ17号で、NASA宇宙飛行士のユージン・サーナンとハリソン・シュミットが持ち帰った月の砂塵の試料に、微小な結晶が含まれているのが発見された。論文主執筆者の米シカゴ大学教授で、シカゴにあるフィールド自然史博物館のキュレーターを務めるフィリップ・ヘックは「この結晶は、巨大衝突後に形成された、現在知られている最古の固体物質で、どのくらい古いかがわかるため、月の年表のよりどころとなる」と説明する。結晶の正確な年代は、結晶内部の鉛同位体の組成比を分析することによって求めた。
月の年齢がなぜそれほど重要なのか
月の正確な年齢を知ることにより、月の歴史の中で月に何が起きたかを理解しやすくなる。初期と現在の地球に関する疑問に科学者らが答えを見つけるためにも、今回の研究で得られた最新情報が助けになるに違いない。「月は太陽系における重要なパートナーであり、地球の自転軸を安定させ、潮汐を引き起こし、1日を24時間にする原因となっている」とヘックは指摘した。「もし月がなかったら、地球での生活はまったく違うものになっていただろう。月は、私たちが理解の向上を目指している地球の自然体系の一部であり、その全体像の中の小さなパズルの1ピースを、今回の研究は提供している」
(forbes.com 原文)