海外

2023.10.31 12:15

TOEIC300点台から米国へ 連続起業家が見たシリコンバレーと東京

丹羽健二氏

──米国で事業をやる難しさはありますか?
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消費者理解ですね。東京って世界で最もビジネスがやりやすい都市だと思っています。BtoCの事業で言えば、日本に住んでいるのはほどんど日本人で、生活様式が似ている。いまだ、みんな同じテレビを見てるし、テレビに取り上げられるとグッとトラクションが伸びる。アメリカだとそれぞれのバックグラウンドが違うし見ているメディアも違う。メキシコ系や中国系、イスラム教徒など、それぞれに独自の生活様式があり、それを理解し、リーチしていくのは簡単ではありません。

BtoBの事業でも、日本だとタクシー広告に出せば法人営業にかなりプラスになるし、東京に本社を置けば、30分以内で、日本のGDPの40%の会社に、対面で営業に行けてしまう。アメリカだと、国中を飛び回る必要があリます。

州ごとにもちょっとずつルールが違います。例えばカリフォルニアだったら、面接で、前職の給与を聞いちゃいけないんですよね。
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──そうしたなかで日本のスタートアップがグローバルで発展するのは難しいように思えます。

おっしゃる通りですが、他の先進国も同様に苦労しています。グローバルで勝っているスタートアップのほとんどはアメリカから生まれており、アメリカが一人勝ちな印象があります。ただ、イスラエルは参考になります。彼らは自国向けに事業を展開せずに、最初から世界展開、もしくはアメリカ市場を狙って事業を進めていきます。NASDAQに上場している企業の数も、ユニコーンの数も、イスラエルは人口比で見ると飛び抜けています。

とはいえ、やっぱり世界最大の市場であるアメリカで勝たずして、世界で勝つのはレアケースだと思うんですよね。

アメリカのマーケットに出るなら、社長はやっぱりアメリカに住んだ方がいい。魑魅魍魎の世界で、起業の難易度が違います。おそらく日本のプロ野球とメジャーリーグの差より大きいのではないでしょうか。

また、他国では、シリコンバレーで成功した人が母国に投資して国の発展に貢献しています。例えばスタンフォードにもUCバークレーにもインド人がたくさんいて、卒業後もシリコンバレーで起業に挑戦し、成功した後、母国のスタートアップに投資しています。日本人留学生で卒業後もアメリカに残って起業する人は少なく、日本人ももっと挑戦してほしいなと思います。いま、アメリカ発のユニコーンの創業者で日本人はいないのですが、1人でも出てくれば、変わってくるのではないでしょうか。

──私もシリコンバレー滞在中、インド人の起業家同士で助け合っている姿を見ました。

日本人起業家も、少しずつ数が増えてきて、人を紹介し合ったり、みんなで集まって勉強会を始めたりしています。また、今年中に経産省がパロアルトにコワーキングスペースを作ると聞いており、それも素晴らしいことだと思います。

日本のマーケットが縮小していくのは間違いないので、日本の起業家はどんどん海外に出てほしいですね。日本人は英語のうまさをめちゃくちゃ気にしますが、英語はツールです。1,2年いれば何とかなりますし、事業をしながら上手くなっていきます。それこそアントレプレナーシップが重要ですね。

文=芦澤美智子 編集=露原直人

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