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2023.10.25

物議の顔認識企業「クリアビューAI」が英国で制裁を回避

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英国の情報コミッショナー事務局(ICO)は、数十億人の英国民の顔画像を本人の同意なしに収集していた米企業Clearview AI(クリアビューAI)に罰金を課したが、同国の控訴裁判所は10月17日、ICOにはクリアビューAIを制裁する権限がないという判決を下した。

ICOは昨年、クリアビューAIが英国民に通知をせず、また同意を得ることなく顔画像を収集したのは一般データ保護規則(GDPR)の個人情報保護に違反するとし、同社に750万ポンド(約13億6000万円)を超える罰金を科すと同時に、データの削除を命じた。

「クリアビューAIは、顔画像の人物を特定できるだけでなく、彼らの行動を監視しそれをサービスとして提供している。同社の行為は容認できるものではない」とICOのコミッショナーであるジョン・エドワーズは当時述べていた。

しかし控訴裁判所は、クリアビューAIのデータが英国外において法執行目的で使われたため、英国の個人情報保護法の適用範囲外であるとの判決を下し、クリアビューAIは控訴に成功した。

クリアビューAIのソフトウェアは、数十億人の顔データベースを検索してマッチする画像を検索する。同社は、法執行機関や民間企業にサービスを提供し、英国ではメトロポリタン警察や国防省、国家犯罪捜査局が同社のサービスを試験導入している。

しかし、同社は2020年にイリノイ州の米国自由人権協会が起こした訴訟で和解した後、顧客を法執行機関や国家安全保障機関とその請負業者に限定した。現在の顧客には米国やパナマ、ブラジル、メキシコ、ドミニカ共和国が含まれ、ウクライナにはサービスを無料で提供していると見られている。

今回の判決は、外国政府の行為がICOの管轄外であり、同局には管轄権がないことを意味する。「ICOは判決内容を受け止め、次のステップを慎重に検討する。今回の判決は、英国民のデータをスクレイピングする国際企業に対してICOが行動を起こす能力を排除するものではない。今回のケースは、外国の法執行機関が規制の適用外であることを示した」と、同局の広報担当者は述べている。

クリアビューAIは、世界各国で同様の法的問題に直面している。フランス、イタリア、ギリシャではGDPR違反が認定されたが、フランスでは期限内に罰金を支払っておらず、命令に従ってデータを削除したかも不明だ。カナダとオーストラリアも同社に対する措置を取っている。

クリアビューAIの顧問弁護士であるジャック・マルケアは「我々は、英国のICOの違法な命令を覆した裁判所の決定に満足している」と述べ、今回の判決を歓迎した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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