トヨタのフランス法人でイノベーション・マネージャーを務めるマテュー・ピッコンはビデオ会議で筆者の取材に応じ、「これは真剣なプロジェクトであり、ギミックではない」と説明。この取り組みがグリーンウォッシング(うわべだけの環境への配慮)ではないことを強調した。
トヨタの電動カーゴバイクは、オプションで大型のフロントバケットやチャイルドシートを装着可能で、ビール樽や大型の家電などを運搬するスペースを残すこともできる。トヨタは、このカーゴバイクを運送業界の顧客などに売り込む計画だ。
例えば、小型バンで貨物を運送する業者にとって、カーゴバイクは自動車が通行禁止の道路でのラストワンマイル輸送ソリューションになるだろう。同社は、他にも自動車のショールームに来店しないような顧客を囲い込みたい考えだ。
電動カーゴバイクを製造するのは、ブルゴーニュ地方の中心都市ディジョン近郊に本拠を置くカーゴバイク専門メーカー「Douze Cycles」だ。同社は、トヨタと共同ブランドの電動カーゴバイクを製造する契約を2022年7月に締結している。販売価格は6500ドル。
フランスの企業は、1台あたり1000ドルの電動カーゴバイク補助金を利用することができ、台数に上限はない。一般市民向けの補助金には所得制限があり、地域ごとに異なる。例えば、パリでは個人が電動カーゴバイクを購入すると600ドルの補助金がもらえるが、リヨンでは100ドルしかもらえない。
トヨタとDouzeが販売する電動カーゴバイクは、かさばる重い荷物の運搬に適しており、最大100kgの荷物を積むことができる。フレームは、連結装置を取り付けられるように設計されており、積載量をさらに増やすことが可能だ。
また、家族の場合はハーネスとシートを装着すれば、最大3人の子供を乗せることができる。電動モーターはヤマハ製で、欧州連合(EU)の制限速度である時速25kmまでのペダリングアシストが可能だ。
「トヨタは、自動車メーカーからモビリティカンパニーへの変革を何年も前から表明しており、今回の取組みはその実現に向けた新たな一歩だ」とピッコンは述べた。
都市部の短距離輸送のニーズに応える
トヨタのフランス法人は、カーゴバイクが普及しても自動車やバンの販売台数が減少することはないと考えている。「電動カーゴバイクは、自動車やバン、特にEVを補完する乗り物だと考えている。重い貨物を長距離輸送するための大型EVに加え、都心部における短距離運搬用にカーゴバイクが必要になってきている」とピッコンは言う。
「われわれは、歩行者区域を通る配送業者をターゲット顧客の1つとして想定している。また、サイクリストたちをディーラー店舗に呼び込み、トヨタがこの新しい市場にもたらすエコシステムを紹介したい」
(forbes.com 原文)