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キャリア・教育

2023.11.15 09:30

NYで「他の弁護士にない武器」を手に入れ宇宙へ。スペースロイヤーという彼女の決意

ニューヨーク経由、宇宙へ

有名裁判官からもらったエールは嬉しかったし励みにもなった。だが、裁判所に足を運んで逆転勝訴を得たのが女性弁護士と女性弁理士だったことが、より強い印象を与えたのかもしれない。

実際、現在も日本の弁護士全体に占める女性の割合は2割に満たない。特に企業法務弁護士の激務と、結婚・出産というライフイベントとの両立の難しさに苦戦を強いられるのは、彼女も例外ではなかった。もっとも痛感させられたのは入所7年目、ニューヨーク・コロンビア大学ロースクールへの留学時代である。
peterspiro / Getty Images

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子どもを産んだので海外留学はもうできないだろうと思っていたところに、夫のニューヨーク赴任が決まった。それに合わせて必死で勉強して、なんとか間に合わせて行ったという状況である。その慌ただしさは、現地でもそのまま続いた。

授業そのものの難しさより、悩まされたのは膨大な勉強量である。大量の英文のテキストや裁判例を読んでは、次々とレポートを提出していかなければならない。他のロースクール生たちは、試験の直前には大学が用意してくれるピザを食べながら、24時間開放される図書館にみんなで詰めている。

だが、新谷は6時になったらナーサリーに子どもを迎えに行き、夕食をつくり、寝かしつけるまで時間はとれない。翌日は朝から弁当を準備し、ナーサリーまで連れていき、買い物もして…と、まとまった勉強時間がないのである。事務所の援助を受けて留学しているため、試験に落ちるわけにはいかないというプレッシャーもあった。焦りと悔しさで、学校からの帰り道となるセントラルパークで何度も、涙が自然とこぼれてきた。

アメリカ自然史博物館が「心の帰る場所」だった

だが、思わぬ救いが新谷を待っていた。住まいの近くにあるアメリカ自然史博物館に初めて足を運んだとき、思わず息を呑んだ。何しろ、1階に広大なスペースを使って宇宙や地球の展示が常設されていたのだ。月から持ち帰った石や、地球で発見された最大の隕石、天井からは大きな地球の模型が吊り下げられている。その一つ一つに見入りながら、「これこれ!」「そうそう!」と、独り言を嬉々としてつぶやく。子どもを迎える前のわずか数分の時間でも、気分転換に立ち寄るようになった。スーッと宇宙の世界に浸り込むひとときが過ごせる。新谷にとって、心の帰る場所だった。
Pakin Songmor / Getty Images

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勉強と育児に追われながらも、ニューヨークで日本を代表するさまざまな企業の日本人駐在員たちと家族ぐるみの付き合いをするようになった。自国の製品に誇りを持ち、アメリカ流の営業を必死に学んで、州知事クラスを相手にメイドインジャパンを売り込んでいる。海外で奮闘する駐在員、そして彼らを支える家族の姿を見るにつけ、ある自問が新谷の頭に初めて浮かんできた。

「日本人として、日本人弁護士として、私はこれから何をすべきなのだろう?」
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文=神谷竜太 再編集=石井節子

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