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2023.12.12 11:00

「ひとを幸せにする」訪問看護専用電子カルテ──元プロジェットスキーヤーの華麗なる転身

厚生労働省は在宅医療の増加により、2025年に看護師が全国で約30万人も不足すると推測している。高齢化社会が進行する日本において訪問看護ステーションの業務効率化は、患者にとっても、その家族にとってもウェルビーイングのあり方を変える大きな課題となっているのだ。その社会課題にいち早く対応してきたのが、eWeLL(イーウェル)の創業者である中野剛人だ。彼のプロジェットスキーヤーからアントレプレナーへの稀有な転身ストーリーとは。


人間は「この先がどうなるのかわからない状況」に対して、不安を感じるものだ。そして「不安な状況は回避すべき」というもっともらしい理由をつけて、昨日と同じ今日を無難に過ごしていく。不安感を抑え込むためには、安定したもの、確実なもの、慣れ親しんだものに囲まれていなければならない。

しかし、人生には「無難」ではなく「有難」こそが必要だ。「有難」な日々が、いずれは有り難い状況を生み出していく。

中野剛人は、周囲が止めたとしても「有難」な日々に果敢に飛び込み、その時々にできる限りの挑戦を続けていく人間だった。だからこそ、昨日よりも今日、今日よりも明日という不断の成長を遂げてきた。

肝臓が破裂しても挑戦を止めなかった


1996年、中野は22歳でジェットスキー(水上バイク)レースの世界に入った。しかし、始めて間もないタイミングで不運に見舞われる。

「練習中の事故で肝臓が破裂してしまったのです。その際、看護師さんの機転の利いた対処のおかげで自分は一命を取り留めることができました」

そこから約10カ月間もの長期入院を経て、中野は競技に復帰している。

「家族や周囲の友達からは、当然ながら『もう、やめておけ!』と言われましたね。でも、自分は誰もが反対するような厳しい状況、成功が約束されていない困難な状況と対峙したときに『必ずやってやるからな、見とけ!』と燃えてしまうタイプなんです」

人生を振り返ってみれば、幼いころから何につけてもそうだったという。

「幼稚園のときには、ブランコの争奪戦がありました。休み時間になるとブランコに向かって男子が一斉にダッシュするのですが、思いっきり乗って遊べるのは、先着3名だけ。自分は、いつも4番でした。それが悔しくて、おばあちゃんの家の長い廊下でダッシュの猛練習をしていた記憶があります。その甲斐あって、先着3名に入れるようになったのです。その経験を通じて『やったら、できるんやな!』ということが理解できたのを、今でも覚えています」

「うるさい、何をバタバタしとんねん!」と怒られながらも決してやめなかった廊下ダッシュの成功体験が、大人になってからのジェットスキーレースにも生かされた。実際に周囲の反対や心配やネガティブな予想のすべてを裏切り、中野は日本でトップの選手に昇りつめて、世界戦の舞台でも2位という好成績を残すことができた。

目覚ましい活躍は、負けず嫌いな自分との譲れない約束であると同時に、競技を始めて間もないころに自分の命を救ってくれた看護師さんへの精一杯の恩返しでもあった。

中野の本格的な恩返しは、競技の引退後にスタートすることになる。

eWeLL 代表取締役社長 中野 剛人

eWeLL 代表取締役社長 中野 剛人

起業家転身後も独自のチャレンジを継続


中野が13年間にも及んだ競技人生を終えた後のセカンドライフ。それは、起業家人生だった。

「引退するまでの13年間、本当に自分の好き勝手にさせてもらってきました。だからこそでしょうか、引退後には『看護師さんに恩返しをしたい』『社会に恩返しをしたい』と本気で思えるようになっていたのです。(肝臓破裂の事故があった)あのときに死んでいたかもしれない命です。助かって、今も元気でいられるなら、何だってできると思っていました」

引退前のラストシーズン、プロジェットスキーヤーとして活動する中野のスポンサーは、訪問看護に特化した事業会社だった。そうした縁もあり、中野は2011年の引退後に住宅型の介護施設でボランティアとして10カ月ほど現場スタッフを経験しながら、まずは訪問看護の業界に横たわる大きな課題を知ることに努めた。

「訪問看護は、少子高齢化の進展に伴って急速に必要性が高まっていました。自分が引退した11年から21年までの10年間で比較すると、全国の訪問看護ステーションの数は2倍以上に増えています。11年の段階ではステーション数は過去10年間ほぼ横ばい、むしろ当時は3年前の数字しか発表されておらずやや減少していましたが、私は必ず増加すると考えていましたし、それに対して看護師が絶対的に不足することも目に見えていました。それなのに、現場では紙の書類に手書きをする非効率な運用が続いていました。当時は、誰も訪問看護業務を効率化するシステムをつくっていなかったのです」

当時の訪問看護業界において、レセプト(診療報酬明細書)請求業務をサポートするシステムだけは存在していた。しかし、日々の看護業務で更新されていくカルテの記載などはアナログな作業で行われ、看護師にとって大きな負担となっていた。

「そこで、12年にeWeLLを創業し、『訪問看護専用電子カルテ』を軸に訪問看護業務をトータルでサポートするシステムの開発を始めたのです。引退した11年は、iPadが発売されたばかりで、『訪問看護業務における課題』に『ITを活用したソリューション』を掛け合わせる事業には、大きな可能性があると感じていましたね」

結果として、eWeLLは14年に訪問看護専用電子カルテ「iBow」を中心としたサービスをリリースしている。そして現在、「訪問看護ステーション向けの業務支援SaaSとして、さまざまなオペレーション業務が網羅されたクラウド型サービスをサブスクリプションで提供し、お客様と共に成長するビジネスモデルを貫く」という初期費用がかからない、ステーションの事業成長に合わせた1訪問100円の従量課金と基本料金の複合型を採用した唯一無二のポジションにいる。売り切りではなくあえて乗り換え可能なサブスクにこだわるのは本物のサービスを提供し続けるという顧客へのコミットだと言う。

「開発時には、誰が見てもわかりやすく、誰が使っても簡単ということに徹底的にこだわりました。もともと自分がソフトウェアを手がけるエンジニア出身ではなく、訪問看護業界の出身者でもなかったところが、逆に功を奏したのだと思います。素人の自分でも難なく使えるUI・UXを追求したことが、『iBow』が好評を得た要因のひとつです」

例えば、「iBow」は管理者・看護師・事務員・経営層など事業所における立場や役割に応じて自分仕様にカスタマイズすることが可能だ。そのための追加費用は一切かからない。リリース以降、「iBow」は訪問看護の現場の声を拾い上げながら、100回以上の機能追加やバージョンアップを重ねて、進化を遂げてきた。業界初のシステムとして生まれ、飽きることなく改善を繰り返してきたのである。先行者ならではのアドバンテージは著しく、競合が存在しない状況だ。

訪問看護専用電子カルテ「iBow」のトップ画面

訪問看護専用電子カルテ「iBow」のトップ画面

「ひとを幸せにする幸せ」がアントレプレナーとしての最大の報酬


全国に15,697ある訪問看護事業所のなかで、訪問看護専用電子カルテ「iBow」を中心としたサービスは2,300以上47都道府県の施設で利用されており、そこに従事する看護師など42,000人以上が日々使用し、保有するデータは累計患者数約55万人分 訪問記録4,800万件以上となっている。(2023年9月末現在)

「訪問看護業務のデジタル化は、まだまだ遅れています。そして、今後ますますステーションの需要が増え続けることは確実です。しかし一方で、訪問看護は独立採算制で、経営が安定せず廃止休止となるステーションが年間約800件あります。『iBow』を導入すれば、訪問看護の周辺業務はアナログ運用と比べてひとつの訪問につき約30分(約60%)の時短が可能になるというデータがあります。ステーションは業務効率を上げて訪問件数を増やすことにより売り上げが伸び安定した経営につながります。ステーションの持続的な成長は、地域にとって極めて重要なことだと私たちは考えます」

さらに、今後は「iBow」に蓄えられているデータを用いて、訪問看護事業だけでなく他の事業者との連携・共創も考えられる。

「例えば、すでに治験会社と一緒に在宅治験を行っています。私たちは全国47都道府県の訪問看護ステーションとつながっており、どこにどのような患者さんがいるのかなど、他の事業者がもっていない医療情報を把握しています。この日々蓄積されている患者さんのデータを活用したり、患者さんに治験に参加したりしていただくためには、当然ながらご本人の同意が必要なのですが、私たちはそこをスピーディに行うことができます。なぜなら、普段から患者さんと密に接している訪問看護師の皆様が全国にいらっしゃるからです。患者さんから信頼を得ている訪問看護師さんと連携することで、最短の日数で治験に向けて動き出すことも可能になっています。このようなシステムが構築できているのも、私たちならではのことです」

治験のスピードが上がるということは、いち早く薬が上市されることにつながり、救われる人が増えるということである。

「eWeLLは『ひとを幸せにする』というミッションを掲げています。22年9月には、12年の創業時から掲げていた10年で株式上場するという目標も果たせました。自社の社員と家族、看護師さんをはじめとする訪問看護業界で働く人々、訪問看護を受けている患者さんとその家族、製薬会社や治験会社で新薬開発に携わっている人々、在宅医療関係者など、あらゆるステークホルダーに幸せを届けることが私たちの使命であり、存在意義だと考えています。私は今、ジェットスキーを始めた22歳当時には想定していなかったアントレプレナー人生を歩んでいるわけですが、『ひとを幸せにする幸せ』を噛み締めることができています。これは、本当に有り難いことですね」

アントレプレナー中野剛人の「廊下ダッシュ」は、終わることがない。


中野剛人
1973年、大阪府枚方市生まれ。元プロジェットスキー選手。競技を始めて間もなく、はじめてのレースに向けての練習中に事故に遭い、一命を取り留めるも長期入院を強いられる。周囲の反対を押しての復帰後、世界2位の成績を残す。2011年、プロ引退を機に起業家として歩み始める。12年6月、eWeLLを設立。22年9月16日、東京証券取引所グロース市場に上場。

eWeLL(イーウェル)
大阪本社/大阪市中央区久太郎町4-1-3 大阪御堂筋ビル13F
URL/https://ewell.co.jp/
従業員/67名(2023年9月現在)

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