水、大気、土壌。自然なくして企業活動は成り立たない。自然資本を守り、その価値を高め、次のビジネスチャンスにつなげることができる企業はどこか。
「我々は、企業が漸進的に生物多様性への負の影響を削減し正の影響を増大させることを求める」。2023年5月に発出された「G7広島首脳コミュニケ」の一節だ。環境を破壊し、自然を搾取する企業活動から「ネイチャーポジティブ経済」への移行を強く訴えかけている。
ここ数年、日本企業からは気候変動や人的資本の話題が多く聞かれる。一方、グローバル社会で新たな潮流となりつつあるのが「自然資本」への取り組みだ。動植物はもちろん大気や水、土壌などの価値を資本ととらえ、自然と経済社会の関係性の見直しが進められている。企業活動は生物界や自然界に大きく依存している。
温室効果ガスの排出など企業が自然資本を毀損することがある半面、取り組み次第で生物や自然の保護・再生に重要な役割を果たすこともできる。
自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は9月、企業活動で生じる自然リスクの開示指針の最終提言となる「v1.0」を正式公開した。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が定める開示基準にも、将来的に生物多様性が入る可能性を指摘する声がある。国際ルールを先取りする企業は競争を優位に進めることができる。脱炭素や人的資本と同様、日本企業は本気で生物多様性を含む自然資本への取り組みを強化すべきだ。
そこで今回は、東証プライム上場企業1836社の自然資本関連情報を収集・分析した。具体的には、「売上高当たりのGHG(温室効果ガス)排出量」「SBTi(Science Based Targets イニシアティブ)脱炭素目標の有無」のほか、「環境技術関連の特許件数」「環境スチュワードシップ(水・森林)」など計16指標を用いて各社のスコアを算出した。ここではランキング上位20社を公開する。
ランキング算出方法
調査対象は東証プライム市場の1836社。2023年7月1日時点で取得したデータを基にサステナブル・ラボが解析。スコアの算出には「売上高当たりのGHG(温室効果ガス)排出量」「SBT(iScience Based Targetsイニシアティブ)脱炭素目標の有無」「環境技術関連の特許件数」「環境スチュワードシップ(水・森林)」をはじめ計16指標を用いた。業種ごとの相対評価で指標スコア(偏差値)を算出したのち、各指標に対してテーマや業種のマテリアリティを基に重み付けを行い、最終スコアを算出。ランキングは小数点第2位以下の数値が大きい企業を上位とした。1 伊藤忠商事:スコア 73.5
大手総合商社。2023年3月期の連結決算売上高は13兆9456億円(前年比13.4%増)。営業利益は7019億円(同20.5%増)、純利益は8005億円(同2.4%減)。評価ポイント
脱炭素社会を意識した経営への変容を目指し、一般炭炭鉱権の売却や、蓄電池事業、セルロースファイバー、廃棄物発電などの環境配慮型ビジネスに注力。サステナビリティの推進体制を構築し、ガバナンスを機能させている点も社外から高く評価されている。
2 オリンパス:スコア 73.3
メドテックカンパニー。2023年3月期の連結決算売上高は8819億円(前年比17.6%増)。営業利益は1866億円(同27.7%増)、純利益は1434億円(同23.9%増)。評価ポイント
環境配慮基準「エコプロダクツ運用規定」を制定し、ライフサイクルアセスメント(LCA)を実施。製造現場での有害物質分析や資源リサイクルに貢献する蛍光X線分析計等の製品を開発するなど、ESGのE(環境)に関連する技術やビジネスの有無が高スコアに寄与。