「ステークホルダー資本主義ランキング」をはじめ、「いい会社」の再定義につながる4つのランキングの注目ポイントはどこか。企業の非財務情報の収集・分析を手がけたサステナブル・ラボのCEOが解説する。
「いい会社」の条件は時代によって変わる。どんなデータや指標を用いて「いい会社」を選ぶのか。本特集の4つのランキングを手がけたサステナブル・ラボ CEOの平瀬錬司に、ランキングの注目点や非財務情報開示の動向などを聞いた。
──23年版のランキングを作成するに当たり、特に留意した点はどこか。
平瀬錬司(以下、平瀬):22年版との最も大きな違いは、サステナビリティへの取り組みが財務に与える影響を重視した点だ。昨年のランキングはサステナビリティに熱心に取り組む企業が上位に入りやすかった。
──評価軸はどのように決めているのか。
平瀬:ウクライナ情勢やアメリカ西海岸の反ESGの動きなど、その時々の外部環境を考慮しながら最適と思われる指標を検討している。さらに、ESGに関連する最先端の研究成果も取り入れている。例えば最近、従業員の満足度が高すぎると企業の財務パフォーマンスが下がるという研究結果が出た。こうした外部の知見を元に評価モデルを設計し、分析を加えることがある。
もうひとつ、ランキング作成に大きな影響を与えるのがデータアベイラビリティ(データが取得できるかどうか)の問題だ。新たな情報開示規制やフレームワークができると、企業はそれらのルールに沿って情報開示を行う。例えば、22年にTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が情報開示のフレームワークを公開した。TNFDは、自然は大気、海、淡水、陸の4つの領域からなると定義づけている。このフレームワークに沿って情報を開示する企業が増えるとデータ収集・分析の幅が広がり、時代の流れに即した指標を設けることができるようになる。