イタリアを代表するラグジュアリーブランドであるゼニアは、「エルメネジルド ゼニア」という名で展開されていたが、2021年にニューヨーク証券取引所への上場に合わせてブランド統合が行われ、ブランド名はシンプルな「ゼニア」になった。現在は80以上の国・地域に500以上のショップを構える。日本でも有名百貨店内にあるショップや路面店が、合わせて26カ所で展開されている。
最高峰のメンズアイテムを提供するブランドとして、世界の実業家やエグゼクティブから絶大な支持を集めている理由は、何よりそのクオリティの高さにある。最上級の原毛を契約農場から買い付け、イタリアにある自社工場で紡績、染色、仕上げまでを一気通貫で行う。
こうして生まれた最高品質の生地は、世界的なハイブランドの目に留まり、様々なブランドの服地に次々に採用されるようになる。かつて高級生地の代名詞といえば英国生地だったが、ファブリックメーカーとして、世界最高級を誇るブランドへと成長していったのだ。やがて自社でも既製服の企画販売をスタートさせ、あっという間に国際的な評価を得て、世界中のビジネスパーソン憧れのブランドになった。
岩だらけの荒地を「オアシス」へと変えた創業者
この圧倒的なクオリティのベースにあるのは、創業者であるエルメネジルド・ゼニアのビジョンだ。
エルメネジルドが北イタリアのトリヴェロに織物工場を設立したのは1910年。彼の夢は、世界で最も美しい生地を作ることだった。だが、同時に見据えていたことがあった。それは、故郷の街とその街を取り巻く世界を、より良い場所にすること。自然を愛し、故郷とコミュニティへの社会還元について強い思いを抱いていたエルメネジルドは、未来の世代の生活の質を損なうことなく、この地で最高品質の製品づくりに挑む。エコシステムという言葉が使われるようになるはるか以前に、エルメネジルドはエコシステムの創造を始めるのである。
創業当時、工場を取り囲むピエモンテのビエッラアルプスの山腹は荒れ果てていた。そこでエルメネジルドは、1910年に植林を始め、1930年代には大規模な環境回復プロジェクトを立ち上げる。トリヴェロ近郊に暮らす人々のコミュニティを豊かにしたい。人と山、文化と自然とのつながりを構築し直し、次世代のために維持したい──そう本気で考えたのだ。
こうしてピエモンテの山地は生気を取り戻していく。ウール工場の周囲約100平方キロにわたって広がる自然区域は、やがて「オアジ・ゼニア」と呼ばれるようになった(オアジはイタリア語でオアシスの意)。
オアジ・ゼニアは誰もが自由に利用することができる場所だ。1420ヘクタールの森林と170ヘクタールの牧草地は、自然とのふれあいを求めて地元住民も数多く訪れる場となった。さらに暮らしやすい街にしようと、エルメネジルドは同地に学校や病院をつくり、岩だらけの荒地に道路を建設した。
ひとりの男がピエモンテ山中に切り開いた一本の道は、今ではイタリアの国道232号線となっている。
オアジ・ゼニア自然保護区域を横切るこの道路沿いにも植林が行われ、現在その数は50万本を超える。232号線は、粘り強く森林再生事業に取り組んできたエルメネジルドの信念の結晶であり、その情熱を今に伝え、未来へと導く道筋でもあるのだ。この道は、ブランドアイデンティティを象徴するブランドマークとして、後にグラフィック化されることになる。
現在のゼニアは、創業者から3世代目にあたるジルド・ゼニアが会長兼CEOとして率いており、環境への取り組みは今も続けられている。オアジ・ゼニアは、ゼニア家3代にわたる情熱のあらわれなのだ。搾取ではなく向上を目指してきたオアジ・ゼニアは、1993年に公式の緑化プロジェクトとして設立され、2014年にはイタリアならではのモデルとしてFAIパトロナージュ(イタリア環境基金)から表彰を受ける。2022年には、コミュニティのための森林管理および生態系サービスに関するFSC(Forest Stewardship Council®:森林管理協議会)規格による国際的な認証を受けるに至った。オアジ・ゼニアは、持続可能性の理念を体現する、ゼニアの環境重視のアプローチが生み出した成果の一つなのだ。
原毛からトレーサビリティを実現した究極のカシミヤ
創業の精神は、一つひとつのプロダクトにも確実に息づいている。例えば、ゼニアが管理するカシミヤ農場とリネン栽培畑から運んできた世界最高の天然資源だけを使用し、イタリアの工場で生産されるファブリック「オアジカシミヤ」や「オアジリノ(リネン)」は、2024年までに完全なトレーサビリティ認定の実現を目指している。すでに2022年秋冬コレクションより、カシミヤ農場から製品製造、店舗に至るまでの全行程を示す動画QRコードを、すべてのカシミヤ製品に同封するという取り組みを行っている。なおも進化し続けようとするゼニアの精神が具現化されたのが、製品のトレーサビリティだったのだ。
オアジ・ゼニアという社会的意義のある再生プロジェクトと、ファッション業界最大の課題とされているサステナビリティの実現とを結びつけた素材が、「オアジカシミヤ」である。カシミヤ生産地である内モンゴルの農家と契約し、買い付けた原毛を、イタリアで紡績して糸にしているが、生産者まで辿れるトレーサビリティを実現させたカシミヤだけが、オアジカシミヤと呼ばれる。ゼニアが、モノづくりのすべてをコントロールできる生産体制を確立させたのだ。こうして、どんな土地で作られ生産されたのか、どんな特性なのかが、説明できるようになった。
ファッションの世界におけるサステナビリティの実現には、さまざまなやり方がある。水資源や二酸化炭素を減らしたり、廃棄物を再利用したりする方法もある。だが、ゼニアが着手した持続可能な生産体制は、トレーサビリティだった。今後は、捨てられるファブリックで、新しいファブリックをつくる挑戦が行われるかもしれない。長く着られる服をつくるために縫製ステッチをより頑丈にしていくことも考えられる。改善点を探り続けることが、サステナビリティの前進につながるはずだ。
新たな船長のもと、躍進する新生ゼニア
2021年、オアジ・ゼニアのビジョンに改めてフォーカスしたリブランディングにより、新生「ゼニア」が誕生した。キーパーソンになったのが、ゼニアの本拠であるトリヴェロで生まれ育ったファッションデザイナー、アレッサンドロ・サルトリだ。2016年6月にアーティスティック ディレクターに就任して以降、ゼニアのクリエイティブすべての責任を担う立場にある。
サルトリのもと、工学的視点に基づいたデザインや、モノづくりに共通の理念を持つクリエイターやブランドとのパートナーシップコレクションも生まれている。MRBAILEY®の名で知られるダニエル・ベイリーやnorda™、The Elder Statesman(ジ エルダー ステイツマン)ら、新しいパートナーシップの開拓もそのひとつ。上質素材とテクノロジーを融合したラグジュアリーレジャーウェアは、新生ゼニアの真骨頂だ。
創業者の理念が息づく世界的なメンズライフスタイルブランドから、今後、どんな挑戦が飛び出してくるのか。大いに注目したい。
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