輸入車愛好家の信頼を集める商品ラインナップ、顧客への思いを乗せたセールス。中古車販売のグローバル展開をコアに、トータルカーライフサポートを実現するのが「トップランク」だ。同社だから提供できる「価値」がある。その価値を支える2人の若きキーパーソンへ、仕事への思いを聞いた。
中古車流通業界は変革期にある。ガソリン車からクリーンディーゼル、ハイブリッド、EVなどへの脱炭素シフトが世界的に大きな流れとなる中、地政学的リスク、半導体不足により新車生産が激減、品薄となって、中古車価格が新車価格を超える歴史的異変が世界各地で起こった。
また、日本国内では、大手中古車販売チェーンによる不正な保険金請求事件が発覚し、この問題への各所の対応と、中古車業界全体の今後のあり方に大きな注目が集まっている。
そうした環境にあっても、輸入中古車販売をグローバルに手がけ、独自の価値提供でブレることなく成長曲線を描いているのが、トータルカーライフサポートを実現している「トップランク」だ。
同社はクルマの価値を、従来の中古車の判断基準であった「走行距離が少ない/車両状態が良い/価格が安い」だけで測るのではなく、「一物一価〜中古車にはひとつとして同じものはない」との視点で、前オーナーの乗り方・扱い方、装備のこだわり具合、仕様の希少性などに基づいて、独自の基準で判断しているという。
今回は、その独自の価値判断と、そこから導かれる価値の提供がどのように実現されているのかを、仕入れと営業の立場で現場を支える二人の若きキーパーソンに、仕事へかける情熱とともに聞いた。
輸入車好きの心に刺さる中古車を仕入れるスペシャリスト
「お客様から『良いクルマを置いているよね』というお言葉を頂いたときに、大きなやりがいを感じます」そう語るのは、トップランク 車両管理室の横井直樹(以下、横井)だ。彼のクルマ好きは、鈑金工場を営んでいた祖父、叔父から受け継いだものだという。
「常に身近にクルマがある環境で育った幼少期の原体験が影響しているのかもしれません」
金融業から転じて、2015年3月に、大好きなクルマに関わる仕事がしたいという思いからトップランクに入社。当初は、常にクルマに関わることができることに加えて、風通しが良くフランクに会話できる職場環境に、「こんなに楽しくていいのだろうか」と驚いたという。
「入社後、最初は海外事業部に配属され、ミャンマーやスリランカ、ロシア、台湾向け輸出車両の仕入れを行いました。各国のバイヤーからオーダーが入った車両を日本のオークション市場で仕入れる仕事です。経験を積んだ後、国内事業部へ異動し、ストックヤード(車両保管場所)で輸入車の流通管理業務(仕入れ、入庫、点検、整備清掃、出庫など)に就きました。
それ以来ずっと、好きなクルマに囲まれています。クルマ好きには最高の職場だという思いは当時も今も変わりません」(横井)
横井は現在、車両管理室に所属し、バイヤー業務を担いながら買取部門のプライシング業務並びに商品車の入出庫車両の管理も担当している。
「今、市場にある台数と、数週間から数カ月の間の流通の変化を比べ、トレンドの車種が何か、相場はどのように推移しているかを、常に頭にたたき込んで相場感覚を鍛える毎日です」(横井)
そのうえで、トップランクならではの価値観で、商品力の強い個体(クルマ)を選び出すのが、バイヤーとしての横井の仕事だ。
「原則として、市場にあふれている個体、ありふれた仕様の個体は仕入れません。なぜならそれらは、価格を安くすることでしか勝負ができないからです。
トップランクが考える“良いクルマ”は、走行距離や車体の状態などで査定する、通常の中古車の判断基準とは違います。安いだけの個体を選ぶことは社のポリシーにそぐわないのです。
国産車に比べ、内装仕様やオプションの選択の幅が広いのが、私たちがメインに扱っている輸入中古車の特徴です。品の良い内装で、稀少な仕様か、高額・特殊な装備が備わっているか、良いカスタムが施されているかという部分が、私たちの判断基準になります。
さらに前オーナーがこれまでどのような使い方・整備をしていたかなどの背景も推察して、考えていきます」(横井)
取り扱う車種の需要に対する横井のアンテナは、国内向けだけにとどまらない。海外向けにおいても、質の高さで根強い人気の日本のスポーツカーを中心に目利き力を活かした仕入れを行い、自社工場でレストア(修復)+モディファイ(カスタム)を施した後、海外の顧客のもとに届けているという。
「トップランクは、買取事業、輸出事業に加え、大型の自社工場を完備しているので鈑金塗装も可能、カスタムなどのサービスにも細かく対応できます。そういったトータルカーライフサポート体制があるからこそ、自信をもってお客様にお応えできるのだと思います」(横井)
トップランクならではの価値観の背景にあるのは、「一物一価〜中古車にはひとつとして同じものはない」という考え方だ。同じ時期に同じ工場で生産されたとしても、扱ってきた人により、クルマの状態は変わってくるのだと、横井は強調する。
「価値の高いものほど、どのような人から買うのかが、重要になってくるのです」
この意識は、トップランクの顧客の価値観にも通ずる。
「私たちのお客様である輸入車愛好家の方々は、凝った仕様に目がありません。お客様が“良いクルマ”と表現するときは、そうした特別感を感じたときなのです」

セールスはおもてなしの心で
トップランクの価値観で“良いクルマ”を仕入れる横井。一方、国内販売部 部長 荒居力哉(以下、荒居)は売る側の人間である。「トップランクを訪れてくださるのは、クルマをただの移動手段だと考えている方ではありません」と口にする荒居。クルマによって彩られる豊かな生活、各顧客のこだわりを充足させることのできる提案をどれだけできるかが、セールスのポイントだと言う。
「トップランクでは、お客様それぞれのこだわりを徹底的にくみ取って、心に“刺さる”クルマをプロとして責任をもって提供しています。
もちろん契約を取る努力はしますが、どちらかというとお客様をおもてなししているという感覚に近いかもしれません」(荒居)
荒居は全く別の業界から営業未経験で、22歳のときにトップランクに入社した。たまたま目にしたトップランクの華やかなショールームに魅了されたのだという。
「まだ若く、深い考えもなく、ただただかっこいい仕事がしたいと飛び込みました」
当時はまだ、本社を兼ねた船橋店と、買取業務をメインで行っていた環七店の2店舗のみで、社員数も40人程度だった。
それから数年間でトップランクの社員数は150人を超え、販売店5拠点、買取店2拠点を含む計9拠点にまで拡大した。今後は船橋エリアに大型ショールームを開設、関西エリアへの進出も決まり、全国主要都市への展開も視野に入れている。そうした成長の歴史と現場に、荒居はずっと立ち会ってきた。
「洗車から始まり、買取や仕入れを学び、店長として店舗運営も行ってきた12年間。キャリアの中心はセールスでした」(荒居)
現在は、自身で顧客への対応(販売・買取・整備)も行いながら、店長を含めた従業員の育成と組織づくり、採用、マーケティングに至るまで、幅広く手がけている。
「この仕事は、普段触れることの少ない高級車を扱い、ハイエンドのお客様と対話ができます。メリットもデメリットも誠実に伝えて納得していただいたうえで成約に至ったときには、感謝までしていただける。とてもやりがいを感じています。
目先の数字よりも、長くお付き合いのできる関係性を優先し、どうしたらこだわりを持つお客様に喜んでいただけるか、日々考えています。入社当時の自分には、まったく想像できなかった仕事をしています」(荒居)
入社当時は、電話対応すら満足にできなかったという荒居。憧れの先輩の背中を追いながら、自身も会社の柱となれるよう、努力を重ねてきた。その努力は報酬にも反映されるので、モチベーションのアップへとつながっていく。任せて良かったと信任される存在を目指して、日々の奮闘は続いている。
「管理職として後進の育成も担う今、かつてとは心境もずいぶん変わりました。スタッフがイキイキと楽しそうに働いているのを見るのが、何よりの喜びになりました」(荒居)

顧客満足を実現するために、仕入れも営業も思いを一致させる
仕入れの横井に、営業の荒居。この2人に代表されるように、職種を超えて全社的な連携を図っているのがトップランクの特徴だ。その理由を荒居が説明する。「購入の決め手やお客様の声などは、つねに関係者に共有しています。仕入れ担当者がお客様の嗜好をより具体的にイメージできるように、どんな方が購入してくださったのかを伝える必要があると思うからです」(荒居)
リアルタイムで現場のニーズやお客様の嗜好を共有し、仕入れ・販売双方で密なコミュニケーションを図ることで、トップランクの品揃えはさらに充実していく。
「仕入れ側、売る側双方の思い、イメージを一致させることで、お客様の要望により応えられる存在になれるのです」(横井)
ではそうした連携を実現している職場の環境は、実際どのようなものなのだろうか。
「『配慮は必要でも遠慮はいらない』入社時に言われた言葉を今も覚えています。皆、仕事になるといつも真剣で、がんがん働いて、トラブルが起きたら全員で解決にあたる。実践のなかで学んでいくことばかりで、多くの仲間に助けてもらったという自覚があります。そうしたサポート体制があるからこそ頑張れるし、若手にもチャンスがあるのだと思います」(横井)
人材の採用も担う荒居も、誰にでもチャンスがある職場だと断言する。
「もちろん若手だけでなく、中途採用の方々にも、等しくチャンスはあります。学歴や経歴はあれば好ましいかもしれませんが、必須ではありません。それよりも大切なのは、人柄や意欲、入社後にどうするかなのです」(荒居)
さまざまな経験を経て、2人が目指す先
最後に、荒居と横井に将来展望を聞いた。「最近また、かっこいいクルマ屋になりたいと考えるようになりました。在庫や店舗環境を充実させていくことは当然ですが、上質で誠実な接客でトップランクのブランドを確立し、クルマ以外のジャンルにも進出していきたいですね」(荒居)
「創業メンバーで仕入れのスペシャリストでもある、私の師匠的存在の上司2人に、少しでも近づきたい。まだまだだとは思っていますし、先の道のりも厳しいと思いますが、あきらめたくありません。そしていつか彼らをライバルと呼べる存在になりたいですね」(横井)