アジア

2023.10.24 11:30

中国で「野良犬狩り」広がる 大型犬の幼児襲撃が発端、非難の声も

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中国の四川省で、2歳の女児が放し飼いされていた大型犬に襲われて重傷を負う事件があり、中国当局が大型犬や野良犬の取り締まりに乗り出す事態になった。ただ、野良犬を手当たり次第に捕獲して殺すなどむごたらしい行為も明らかになり、ペットの飼い主らから怒りの声が上がっている。

香港紙のサウスチャイナ・モーニング・ポストなどによると、事件は先週、四川省の崇州市(成都市管轄)で起きた。母親が女児を連れて住宅地区を歩いていたところ、黒い大型犬が女児に襲いかかった。母親が間に入って止めようとしたが、女児は犬に数回かまれ、肋骨を骨折したほか腎臓を損傷する重傷を負った。

近くにいた作業員がほうきと大きな棒を使ってどうにか犬を女児から引き離し、追い払った。一部始終は防犯カメラで捉えられていた。襲ったのはロットワイラーで、この犬の飼い主のほか、近くにいた白いラブラドール・レトリーバーの飼い主もその後逮捕されている。

各地で野良犬殺し横行

英BBCなどによると、事件を受けて中国当局は野良犬や未登録の犬、大型犬の取り締まりに着手した。しかし、それに関連して野良犬が残酷な仕打ちを受けている話がソーシャルメディアなどで次々と伝えられ、ペットを飼っている人らの間で批判や反発が広がっている。

山東省や江西省、湖北省の市は、野良犬を捕獲し、引き取り手がなければ殺処分すると発表した。ソーシャルメディアのユーザーからは、居住する地区の警備員が野良犬を殺し、死骸をごみ収集容器に捨てているとの投稿が相次いでいる。あるケースでは、警備員らがテナントの許可なく事務所に立ち入り、中にいた犬2匹を殺したという。

遼寧省のある大学では、キャンパス内をうろついていた犬を警備員が殺した。この警備員はのちに解雇されたという。重慶市の大学でも、学生を追い回していたとされる小さな野良犬が捕まえられて殺処分された。捕獲の様子を撮影した動画はネット上で大きな注目を集めた。

一方、貴州省や四川省、安徽省などは事件後、公共の場でのペットの責任ある管理を促進するためにリードの配布を始めた。内モンゴル自治区のフフホト市は、野良犬を一斉捕獲するが殺処分はしない方針だという。

中国メディアの九派新聞が実施した世論調査によると、野良犬狩りを全国で続けるべきだとする回答は33%だった。47%は今回のような事件では責任は犬ではなく飼い主にあると答えており、意見は割れている。

BBCによると、中国国内には野良犬がおよそ4000万匹いるという。

地方によって異なる規制

中国では地方によってペットの所有や登録、動物の管理に関する規制は異なり、実施が緩い場合もあるとBBCは伝えている。中国にはペットを保護する動物虐待防止法のような法律もない。

サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、北京市の通州区は2019年、体高が35cmを超える犬の飼育を禁じた。別の報道によると陝西省西安市は2012年から、ピットブルやジャーマン・シェパードなど34犬種類の飼育を禁止している。

四川省の広元市動物愛護センターの杜玉鳳代表はサウスチャイナ・モーニング・ポストに「画一的な措置ではさらにあつれきを生むだけしょう」と語っている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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