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2023.10.23 17:45

谷村新司が遺した珠玉の言葉──目指すものを心から信じ切れるか

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「伝えたいことがたくさんありました。特に若い人にね。例えばいまは、大切なものをたくさん見落としてしまう時代なんです。大人たちがそうしてきたから。でも、そろそろ誰かが言わなくちゃいけない。だから、そのヒントを小説に散りばめました」
 
「生きるために大切なものがわからないで何をするんだろう」とも谷村さんは語っていました。わからなくても生きてはいける。食って、寝て、排泄して。でも、それでは動物と変わらない。
 
「例えばひとつ、シンプルにヒントを教えましょう。心臓を止めてごらん。自分の意思で、それができますか。できないんですよ。実はわれわれは生きているんじゃない。生かされているんです。それがわかってくれば、生きる姿勢は変わります」

自分が信じたものに素直に従う

物事はすべてつながっている。谷村さんはそう言いました。
 
「例えば、僕は1981年に中国で歌った。日本人の音楽家からは言われました。行っても儲からないのにって。でも、僕はお金のために歌っていたわけじゃない」
 
どういうわけだか、不思議と海外に縁があったのだそうです。それに気づいて思った。おそらく国と国とをつなぐような何かをするんだろうなと。
 
「だから、そういう機会があったらやってみたいなと思っていると、やっぱり出会いがあるんです。そして、そんな僕を支えてくれる人もいて」
 
いろんな経験や人が、ジグソーパズルのように組み合わさって、いつも何かをしてきたといいます。
 
「だから僕は、そのときそのときにやりたいと思ったことを大事にしてきたし、そのときそのとき、自分のベストを尽くしてきた。出し惜しみは決してしなかった」
 
加えて、外からの評価も気にしませんでした。それは自分がすることではない、まわりが判断することだから。自分自身が「これだ」と思えるものをひたすら表現することが大事でした。
 
「ブレイクできたアーティストと、そうでないアーティストの違いは何か。それは意志なんです。目指すものを心から信じ切れるかどうか。信じ切れない人は、あっちフラフラ、こっちフラフラしてしまう。それこそ鳥の目で見てみれば、よくわかるんです」
 
何がしたいのか。どうなりたいのか。自分の仕事の成功とは何を意味するのか。何が自分の幸せなのか……。まずは、そういうことをはっきりさせることが大事になるということです。
 
「神社に行って、ぼんやりとしたお願いをしても、神様だって困りますよ(笑)。何をどうしたいのか、はっきりとイメージしないと。そしてそこに自分の意志を持つ。そしてそれを信じ続けることです」
 
「信じられるほどのものが描けない人もいるかもしれない」とも谷村さんは言っていました。でも、それは違うのだと。自分を信じるから、描いた絵にたどりつけるのだと。
 
いかに自分を信じるか。信じて自分が動けるか。信じたものに素直に従えるか。谷村新司さんからのエールでした。

文=上阪徹

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