「冬の稲妻」「チャンピオン」など数多くのヒット曲を送り出す一方、ソロ活動や楽曲提供なども積極的に行い、「陽はまた昇る」「昴-すばる-」「群青」「サライ」「いい日旅立ち」などのヒット曲を手がけてきました。
2009年にインタビューしたとき、「どうして音楽を始めたのか」という質問からスタートしました。谷村さんはこう答えました。
「答えは簡単、女の子にモテたかったから(笑)。女の子を振り向かせる手段はこれしかないと信じ込んでいましたから」
アリス結成は直感からだった
その一方で、自分たちがつくった歌で感動してくれる人がいるということに感動したそうです。そこから「何かが動き出していった」。「僕は、ミュージシャンになろうと思っていたわけではありません。音楽をやっているうちにたくさんの人との出会いがあって、『ちょっとラジオでしゃべってみないか』『レコードを出してみないか』と声をかけてもらえた。気がついたらプロになっていたんです」
アリスの結成も出会いだったといいます。ミュージシャンとはたくさん出会っていたけれど、あの2人との出会いは特別なものだと感じたのだと。
「一緒にやったらうまくいくとかじゃなくて、やらないといけないと思いました。直感です。いまでもひたすら直感で生きているんですけどね。出会った瞬間、感じるのです。感じないときは、ずっと一緒にいても感じませんから」
そして、アリスは高いステージにまで行くという確信めいた直感もあったそうです。デビュー後、なかなかヒット曲が出なかった時期もまったく気にしなかったといいます。
「僕たちは助走期間だと思っていました。高く跳ぶには助走がいる。ヒットが出ないんじゃなくて、まだその時期じゃないんだと(笑)」
ただ、高いステージに行くための努力は続けていました。それだけの価値がなければ、そこへはたどり着けないから。
「いまの若い人は、『週にどれくらい休めますか』と平気で聞くそうですね。正直、僕には驚きです。条件を言う前に、自分自身にそれが言えるだけの価値があるのかと自問しないといけないでしょう。そうじゃないと、物事をわかっている人に対して通用しないですよ」
自分たちを信じる気持ちを持つためには、それにふさわしい行動が必要になるということです。
実はわれわれは生かされている
次々と大ヒットを放ったアリスでしたが、10年で活動を停止します。まわりからは、どうしてと言われたそうです。「でも違うんです。僕らはずいぶん前から、どうやってアリスという山を下りるのか、そしてどうやって次の山に移るか、それを考えていたんです」
ヒットが出始めても、まったく変わることはなかったといいます。いまは流行っているけれどと、醒めて自分たちを見ていた。もとより同じところにはずっとはいられません。それをわかっていたからこそ、次の山を見据えていたのです。
「子どものころから、僕はいつも自分を上から見ているような意識がありました。鳥の目線です。鳥の目で見ていると、自分たちの姿って、よく見えるものなんですよ」
次の山であるソロ活動にも成功、世界に目を向けアジアのミュージシャンを集めたイベントなども開催します。中国では教壇にも立ちました。そして小説『昴』も刊行します。