長期間にわたり電力を貯蔵する技術
一方で、ローレンス・バークレー国立研究所のバッテリー科学者のロバート・コステッキは「充電式のバッテリーは、熱力学的に不安定で、組み立てた瞬間から劣化が始まることになる」という。「この劣化現象をどれだけコントロールできるかが問題だ。安価な部品があっても、劣化が早ければ、全体的なコストは増加する」フォーム社の鉄空気電池は、多孔質の鉄板を水ベースの電解液に浸して、電気化学サイクルを発生させる。放電すると、バッテリーは空気中の酸素を吸収し金属鉄を錆に変える。充電時には、流れ込む電流が錆を鉄に戻し、バッテリーは酸素を放出する。しかし、鉄そのものが消費されることはないため、電池の耐久性は非常に高い。
このバッテリーは、リチウムイオン電池ほど小型化することはできないが、自動車用ではなく据え置き型であることを考えれば、サイズは問題ではない。フォーム社の電池は、海上コンテナとほぼ同様のサイズの長さが約12メートルの筐体で5メガワットの電力を供給可能で、火災の危険性もほぼないため、複数のパックを並べたり、積み重ねたりすることも可能だ。
長期間にわたり電力を貯蔵可能なソリューションは鉄空気電池以外にも数多く存在し、バナジウムなどのイオンの酸化還元反応を利用して充放電を行うフロー電池も選択肢の1つといえる。フォーム社の競合のESSは「鉄フロー電池」を開発中で、ナトリウムや亜鉛ベースのバッテリーも有望視されている。ただし、これらのグリッドパックの蓄電可能時間は約12時間で、フォーム社の目標の100時間にははるかに及ばない。
しかし、バークレー研究所のコステッキは、実際の耐用時間が十分に検証されていない中で、低コストの長時間の電力貯蔵を実現するのはかなり難しいと考えている。
「リチウムイオンやバナジウム、亜鉛、鉄空気などのすべてのシステムの最大の懸念は、天然ガス発電や既存の非バッテリー型の貯蔵システムと比較して、コストが少なくとも3倍は高いことだ」と彼は述べている。
フォーム社は、今後の約1年半で商業生産に移行することで、競合に先駆けて市場に参入できるとジャラミロは考えている。しかし、コステッキは、どのバッテリーが最良の選択肢になるかはまだわからないと述べている。
「この分野のさまざまな課題に取り組む人たちがいることは、非常に心強い。しかし、その努力がテラワット規模の電力ソリューションの実現に結びつくかどうは、まだわからない」と彼は語った。
(forbes.com 原文)