エシカルという言葉は、英国での「エシカル・コンシューマー」が発祥で、人や地球環境(動物を含むすべての生き物を含む)、社会、地域に配慮した考え方や行動のことである。フード、トラベルに続き、ファッション分野でも取り入れられている。
そんなエシカルを広めるための団体を日本で初めて立ち上げたのが、一般社団法人エシカル協会の代表理事・末吉里花氏。2015年の設立当時はエシカルと名のつく団体は他になく、日本におけるエシカルのパイオニア的存在となっている。
今回は、筆者が所長を務める企業コンソーシアム「SDGs研究所」で、10月6日に行われた末吉氏の講演と筆者との対談内容から、エシカルの本質を紐解く。
エシカルの「エバンジェリスト」
末吉氏がエシカルに興味を持ったきっかけは、ミステリーハンターとして出演していたテレビ番組「日立 世界ふしぎ発見!」(TBS系)だった。2004年に登頂したキリマンジャロで、ショッキングな光景を目にしたのだ。キリマンジャロの山頂には、太古から氷河が残っている。しかし近年の地球温暖化によって、本来の大きさの約9割が溶けてしまっていた。その雪解け水を使っている麓の住民たちの生活にも影響が出ていた。
こうした現状を目にして、「世界で起こっているさまざまな問題を人々に伝え、みんなで解決策を考える活動を始めたい」と、エシカルのエバンジェリストになった。
末吉氏は、一般的なエシカルの定義について「法的な縛りはなくても、多くの人たちが正しいと思っていること。本来、人間が持つ良心から発生した社会的な規範」説明。
「私たちは、エシカルをある意味“哲学”だと捉えており、エシカル×SDGs≒サステナビリティの向上であると考えています。エシカルな哲学をもったうえでSDGsの達成を目指す中で、はじめてサステナビリティが向上するのです」
大和言葉とエシカル
末吉氏によると、日本にはエシカルにつながる言葉がいっぱいあるという。おたがいさま
おもいやり
もったいない
足るを知る(少欲知足)
お天道様が見ている
三方よし
など。
横文字をただ発信するだけでなく、日本人の“腹に落ちやすい”表現は何なのかということを常に考えながら説明しないと、上滑りになる。
実は、かつて消費者庁が「倫理的消費」調査研究会で「『倫理的消費』(エシカル消費)の趣旨が伝わる日本語表記案の募集」、いう全国アンケート調査を行ったことがある*。エシカルは、政府の消費者基本計画で「地域の活性化や雇用なども含む、人や社会・環境に配慮した消費行動」と定義されているが、これが難しいからと募集したのだ。
この調査結果が興味深い。「思いやり消費」や「つながり消費」などが比較的多く、キーワードとしては「未来」、「優しい」、「社会」、「つながる」、「心」といった様々な言葉が挙げられた。
これを受け、ひとつの名称で言い換えることは難しいので、テーマ・対象となる世代などに応じてふさわしい言葉を使い分けることが望ましい、との結論になった。