北米

2023.10.21 08:00

NY、3Dプリンター購入者の身元調査義務化を提出 ゴーストガンの取締強化

安井克至

Getty Images

ニューヨーク州の下院議員が、3Dプリンターの購入希望者全員に対して身元調査を義務付ける法案を提出した。追跡不可能な「ゴーストガン」の製作に使用されるおそれがあるためだ。

ジェニファー・ラージクマール下院議員が提出したその法案は、対象とされる3Dプリンターの購入希望者に対して犯罪履歴確認を義務づけるもので、購入者が合法的に銃を所有することを妨げる結果が出た場合、販売は禁止される。

新法はすべての3Dプリンターに適用されるものではなく、実用になる銃器や部品を作るために使用可能な機種が対象になる。3Dプリンターは暗視装置、グリップ、弾倉、ホルスターなどを強化プラスチック、丈夫なゴム、さらには金属で作ることができる。

同法案は、ニューヨーク郡地方検事と州議会が、3Dプリントされた銃と銃部品をすべて違法とし、それらを3Dプリントするために必要な設計図を公開することを軽罪とする法案を6月に提出したのを受けたものだ。

ニューヨーク郡地方検事のアルヴィン・ブラッグはプレスリリースで、州警察はかつてない数の3Dプリント部品と銃器を押収しており、製作者が銃追跡の法を守らなければ、出所を追跡する方法はないと語っている。

「テクノロジーは、数百ドル(数万円)あれば誰でも危険な武器や銃器を、快適な自宅で作ることを可能にしました」とブラッグはいう。

米国司法省が2022年に国内で押収したゴーストガンの数は2万5785丁にもおよぶ。

ワシントンD.C.はいくつかの州とともに、2021年に警察が押収した手製拳銃の数は1万9000以上に上り、2016年の1700丁から大幅に増えたことを報告した。

3Dプリンターで作られた銃はゴーストガンの一種であり、さまざまな部品を使って組み立てられ、追跡が不能でシリアルナンバーもない。この種の銃器は、バイデン政権下で増えている規制の標的となっており、昨年は、ゴーストガンの製作を禁止し、自宅で銃を製作するためのキットを、銃本体と同じ分類とする一連の新法を通過させ、今週最高裁はこれらの法律が合法であることを再度裁定した。

オープンソース会社のDefense Distributedは、2013年に初めて自宅で3Dプリントできる拳銃「The Liberator」の設計図を公開した。創業者のコーディー・ウィルソンは、最初の3Dプリント銃をテキサス州オースチンの私有地で発砲し、翌日設計図を公開したところ、2日間で10万人がダウンロードしたと、3丁のThe Liberatorを所蔵するヴィクトリア&アルバート博物館は伝えている。

その2日後、政府は国際武器取引規則(ITAR)に基づいて設計図を削除するよう命令したが、ウィルソンは銃の製作自体に関していかなる法も犯していなかった。個人で使用するために銃器を製造することは現在も合法だが、あらゆる銃は金属検知器によって検知可能であること、また昨年からは、正体不明で追跡不能なゴーストガンの数を減らすために、シリアルナンバーを発行することが法律で義務づけられている。

銃規制反対団体やいくつかの保守派グループは、バイデンの新たな規制に激しく反対し、現行の法律および個人が銃器を保有・所持する権利を保障している憲法修正第2条に違反していると主張。銃製造業界は最近、分解された銃のあらゆる部品にもシリアルナンバーを発行する規則に異議を唱えたが、最高裁判所は10月16日、異議を却下している。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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