しかし、育児休業を歓迎しない職場の雰囲気や、人手不足、周囲に迷惑をかけることへの後ろめたさなどを理由に、優れた制度があっても、男性が育児休業を取らない、または取りづらいといった課題はいまだに残されています。
男性の育児休業取得が、家庭にとっても企業にとっても自然である社会を構築することは、ジェンダー・パリティ実現へのレバレッジポイントになり得るでしょう。本題についてWEFのアジェンダからご紹介します。
男性の育児休業取得率は、2022年度の厚生労働省による調査において、5人以上を雇用する全国の3000余りの事業所から回答では、前年度より3.16ポイント上昇して17.13%となり、過去最高に達しました。また、従業員1000人を超える大企業における男性育児休業取得率は、46.2%という結果が出ています。
そして、育児・介護休業法が改正され、2022年10月より男性が育児休業を取りやすくする新制度「産後パパ育休」が始まり、男性の育児参加を促進する傾向が顕著です。
法改正が後押しする、男性の育児参加
男性の育児参加が少しずつ進んでいる背景には、2022年4月から、段階的に行われてきた改正育児休業法の施行により、育児休業制度の周知や取得意向の確認などが企業に義務付けられたこと、また、分割して育児休業を取得できるようになったことなどがあります。特に、最長で子どもが2歳になるまで、夫婦どちらでも取得することができる既存の育児休業制度に加え、子どもの生後8週間以内に4週間まで男性が育児休業を取得することができる「産後パパ育休」制度の導入により、男性が育児に専念できる環境整備が進んでいます。
日本の育児休業制度の充実度は、こうした法改正以前から世界で高く評価されてきました。
2021年にユニセフが発表した報告書によると、経済協力開発機構(OECD)および欧州連合(EU)のいずれかに加盟する41カ国の育休・保育政策等を評価したランキングでは、日本の育児休業制度充実度が1位となりました。その理由は、父親に認められている育児休業期間が最も長く、休業給付金額が最も高いこと。一方で、他国と比較して取得率が低いことが同報告書では指摘されています。
企業の役割
優れた制度が有効に活用されるためには、企業の役割も極めて重要です。今年3月以降、上場企業は、有価証券報告書に、人材育成や働きやすい社内環境整備の方針といった人的資本に関する情報の記載が義務付けられるようになりました。中でも、働きやすさやウェルビーイング(幸福)につながる重要な指標として、男性の育児休業取得率の公表が含まれたことは、この制度改革の注目すべき点です。
制度があっても男性が育児休業を取らない、または取りづらいことが、日本が抱える課題の特徴です。
その背景にあるのは、育児休業の取得を歓迎しない職場の雰囲気や、人手不足、業務の属人化など、企業が抱える課題。また、仕事を離れることで周囲に迷惑をかける後ろめたさや、今後のキャリア形成に悪影響になるといった男性本人の懸念があります。こうした課題の解決には、意識改革や、一定期間欠員が生じても業務に支障が出ない体制の整備などを、企業がこれまで以上に進めていくことが求められます。