企業が、そして日本が生き残っていくために必要なのは共創と新結合である。審査員が感じた事業共創の力と現在地とは。
「日本の企業は、活用可能性のある素晴らしい技術やノウハウを持っている。日本は捨てたものじゃない」。本アワードの審査会はこんな言葉から始まった。審査員たちは、日本の希望となる企業のレガシー(資産)の活用方法に着目した。ノミネートされたのは、業界や分野を横断し世界を変えようとしている約40のプロジェクト。高齢化、少子化、過疎化などの面で課題先進国である日本において、解決に有効だと考えられるプロジェクトが目立った。
変化する大企業の在り方
冒頭、審査員の山口周はこう投げかけた。「21世紀に入ってから大きく企業価値を伸長させた企業を並べてみると、あることに気づきます。それは、それらの企業に必ず『社会運動的側面』が含まれているということです。かつて社会運動・社会批判の矛先は資本主義と大企業に向けられていましたが、いま世界では、社会運動・社会批判としてのビジネス、いうなれば『クリティカル・ビジネス』が増えている。日本においてもこの波がやってきていることを実感しています」。ひと昔前の大企業は、公害や利権の独占などで社会批判の矢面に立たされていた部分もあった。SDGs経営やパーパス経営が一般的になりつつあるが、それはこれまでのように資本主義に則った成長戦略を実行するだけでは成長できなくなっている大企業の突破口のひとつなのだろう。自己革新を求め共創していくにあたり、負の側面もあったレガシーを新しい文脈で再解釈することによって、社会課題の解決を実践しやすくなるのかもしれない。これこそが、大企業が共創に取り組む意義であり大企業が「新結合」すべき理由なのである。
例えば、ヤンマーマルシェはこれまで農業生産量を向上するためのサービスをメインに行っていたが、生産に伴い発生するメタンガスに目を向け、逆に「メタンガスを減らすこと」をビジネスにすることに成功している。