女性が働く中でも向き合わなければいけない体調変化や妊娠・出産。フェムテック業界は企業間の壁を越えてそうした課題を解決する可能性を探っている。
NTTコミュニケーションズが今年1月に立ち上げた「Value Add Femtech Community」は、フェムテック領域のヘルスケアデータを活用し共創を目指すコミュニティで、25社が参画。きっかけは、NTTコムと婦人科領域のオンライン診察サービス「スマルナ」を提供するネクイノが議論を交わしたことだった。ネクイノの石井健一は言う。「例えばホルモン値を測れる企業や痛くないマンモグラフィを開発する企業がプラットフォームにいれば、複数社のデータをかけ合わせてユーザーの状態をより正確にとらえ、がんなどのリスクを早く発見することも可能になるかもしれない」。
各社に散在しているフェムテック領域のデータを連携できれば女性のQOL向上につながる新たな製品・サービス開発ができると考え、NTTコムが参画企業の保有データを格納し安全に利活用できるプラットフォームを提供する。
携帯電話販売・代理店事業を手がけるティーガイアは、フェムテック製品を取り扱う店舗やECを立ち上げる予定だ。ティーガイアの吉澤麻里は語る。「私たちの強みはリアルで顧客との接点をもっていること。医療よりももう少し気軽なお客様との接点になれると思っています。そこで得られるパーソナルデータがプラットフォームに乗れば新たなサービス創出にもつながる。いずれはこのコミュニティで生まれた商品に触れたり、購入したりできる場としての役割を担っていきたい」。
コミュニティのメイン活動は参画企業の担当者が集まりフェムテックデータ利活用を考えるワークショップだ。男性も参加することで視点が広がり、女性間で悩みの大小の差がある話題でも活発に意見が交わされるように。「月経・PMS・更年期」「不妊・妊活」等をテーマに新しいビジネスモデルの具現化に向けて議論が重ねられている。
現在目指しているのが、ユーザー個人の趣味嗜好や生活リズムに最適化されたサービスの開発だ。課題はデータの安全な保管や本人同意の取得だ。NTTコムの久野誠史は「利用者にデータ利用目的や得られるメリットをわかりやすく伝えることが大事。企業横断で収集したデータを分析活用することで付加価値を生み出し、女性に還元する仕組みを構築していきたい」と語る。
久野誠史◎NTTコム スマートヘルスケア推進室長。NTT入社後、主に新規事業創出業務に従事し、21年より現職。
吉澤麻里◎ティーガイア決済サービス事業部長。1児の母として女性活躍に貢献したいと22年フェムテック事業を立ち上げる。
石井健一◎ネクイノ代表取締役。薬剤師・経営管理学修士(MBA)。外資製薬会社、医療コンサルを経て16年ネクイノ創業。