北米

2023.10.18 08:00

バイデン政権が全米の「水素ハブ」7拠点に70億ドルを投資

フィラデルフィア港で演説をするバイデン大統領(Photo by Mark Makela/Getty Images)

米国は、二酸化炭素を排出しない水素燃料の生産と利用を拡大するため、巨額の公的・民間投資を受ける「水素ハブ」を全米に7つ設置しようとしている。

米エネルギー省は10月13日、政府が16州にまたがる7拠点の水素ハブに、70億ドル(約1046億円)の補助金を拠出すると発表した。この補助金は、2021年のインフラ投資雇用法(IIJA)に基づき拠出されるもので、製油所や肥料製造のための水素プロジェクト開発を目指す企業の約430億ドルの民間投資によって増幅され、米国史上最大規模のクリーン製造への投資となる。

バイデン大統領は、13日にフィラデルフィア港でハブの計画を説明し、「水素は鉄鋼やアルミニウムの生産といった産業に電力を供給し、トラックや鉄道、飛行機などの輸送システムを革新する」と述べた。

水素は石油精製や化学・肥料製造、食品加工など、数多くの産業ですでに多用されているが、米国ではそのほぼすべてが、二酸化炭素を発生させる「グレーなプロセス」で天然ガスから抽出されている。新たな水素ハブは、再生可能エネルギーを使って水から水素を取り出す電解槽の使用など、よりクリーンな方法へと水素製造をシフトさせることを目的としている。

当局によると、ハブによるクリーンな水素の生産量は年間300万トンを超えると予想され、ガソリン車550万台分に相当する年間約2500万トンの炭素汚染をなくす効果が見込まれている。

すでに水素自動車や水素トラックが走っているカリフォルニア州と、石油精製工場で大量の水素を使用しているテキサス州のハブには、それぞれ12億ドルという最大の補助金が割り当てられる。さらに、ウェストバージニア州などのアパラチア地域や、テキサス州ヒューストンを中心とするメキシコ湾岸地域、ミネソタ州などを含むハートランド地域など、全米で7つの地域がハブに指定された。

これらのプロジェクトには、燃料を輸送するための新たなパイプラインの建設が含まれており、数十万人の新たな雇用の創出が期待される。投資の約3分の2は、水の電気分解による水素製造に充てられる。

カリフォルニア州は20万人の雇用を創出

カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、このハブへの指定にあたり「私たちの州では20万人以上の雇用の創出を見込んでいる」と記者団に語った。

エンジンメーカー、カミンズのクリーンテック部門であるアクセラのエイミー・デイビス社長も、ハブの創設と12月までに実施されるクリーン水素向けの減税措置が「業界に巨大なインパクトをもたらすことになる」とフォーブスに語った。アクセラは、連邦政府のプログラムによって需要が高まる見通しの電解槽と、大型トラック向けの水素燃料電池の生産を強化している。

化石燃料を置き換えるために水素の利用を拡大する米国の努力は、ヨーロッパや日本、韓国、カナダなどの主要経済国での努力と相まって、時間はかかるだろうが、大きな一歩になると世界最大級の水素製造業者のAir Products(エアープロダクツ)の副社長のエリック・グターは述べている。

「私は、気候変動への取り組みにおける世界的な協調において、水素が重要な役割を果たすことを非常に楽観している」とグターはフォーブスに語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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