「太陽系2.0」とのニックネームがつけられている恒星系「トラピスト1(Trappist-1)」は、惑星科学者たちを魅了している。この恒星系では、地球からわずか39光年の距離にある1つの恒星を、7つの惑星が公転。太陽系とあらゆる点で同じというわけではなく、主星は太陽よりはるかに温度が低い赤色矮星(わいせい)だが、7つの惑星は全てが岩石質、地球サイズと、少なくともいくつかの点で地球に類似している。
米航空宇宙局(NASA)は2017年、スピッツァー赤外線宇宙望遠鏡でトラピスト1を観測した結果、単一の星のハビタブルゾーン(生命生存可能領域)内で最も多くの地球サイズの惑星が見つかったと発表した。
惑星のどれもが実際に地球に似ているかどうかは不明だが、系外惑星研究者らは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)によって、これらの惑星を取り巻く大気が存在するかどうかが判明するのを待っていた。最も調査しやすい惑星は、主星に最も近く、最も高温で明るい「トラピスト1b」だ。
今年5月には、JWSTに搭載のMIRI(中赤外線観測装置)を使ったトラピスト1bの調査が実施されていた。そしてこの度、JWSTのNIRISS(近赤外撮像分光器)を用いた調査結果が発表された。NIRISSは、恒星からの白色光を虹のような色成分に分解する装置だ。
大気は確認されず
学術誌The Astrophysical Journal Lettersに掲載された
論文によると、トラピスト1bに大気が存在することを示すものは確認されなかった。米ミシガン大学の天文学者で、NASAセーガン・フェローのライアン・マクドナルドはプレスリリースで「これによりトラピスト1bは、大気のない岩石か、大気圏の高い位置に雲があるか、あるいは、大気が二酸化炭素のように非常に重い分子でできていて、希薄すぎて検出できないかの可能性があることがわかる」と述べている。「だが、実際に断定できるのは、間違いなく主星が今回の観測結果を左右する最大の影響を及ぼしており、この系の他の惑星にも全く同じ影響が及ぶことだ」