カルチャー

2023.10.19 11:00

新・ラグジュアリーの文脈で考える「復刻」の意味

CFCL 23-24年秋冬コレクション(Getty Images)

9月後半のおよそ1週間、デザインプロダクトを巡る旅をしました。25年以上続いてきた毎年恒例の行事です。ぼくがアドバイザーをしている東京のデザインプロダクトを扱う会社の社長と一緒に、家具や雑貨のメーカー、20世紀後半のデザインの本を扱う書店やヴィンテージショップの倉庫、デザインプロダクトの美術館などを目指しイタリア各地を訪ねます。

この旅が25年以上続いてきたのは、その年数分、20世紀後半のデザイン製品の復刻を手掛けてきたからです。前述の社長が気に入ったデザイナーの気に入った製品が既に生産停止になっていることが多く、90年代末期以降、これを世に再び出すということをやってきました。

したがって、デザインの著作権をもっている人や事務所(デザイナーが既にこの世にいない場合、親族、元スタッフ、財団)を見つけだし、かつて生産していた企業にまだ製造権や販売権があるのかを確認し、そしてまだ権利を優先的にもっている企業に復刻を持ちかけるのです。彼らにその意思がない場合、日本での製造権利を取得し売ることが選択肢になります。

今年、一つの潮流の存在をはっきりと確認しました。それは、前世紀後半のデザインプロダクトの復刻が一時的なビジネス手法以上になってきた、ということです。復刻そのものをビジネスのコアにおいた企業の存在感が増してきています。

かつて作っていた企業が何かの記念として一時的に復刻させる、小さな規模の企業が認知度をあげるために知名度の高いデザイナーの製品を復刻版として売り出すというのではなく、それなりに資金がありそうでビジネス経験もある陣容を揃えた企業が「デザインヒストリーの再編成」をアピールしはじめています。 

復刻そのものは昔からあるアプローチです。あるいはフォルクスワーゲンのビートルやフィアットの500のように、復刻ではなく、かつてのヒット作の発展系というのもありました。しかし、現在ある動きは、イタリアデザインの全盛期とされた1960-80年代のインテリアデザインの資産を再評価し、それによってイタリアデザイン史をより「豊かに生きたもの」にしようという意図が強そうです。
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文=安西洋之(前半)、中野香織(後半)

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